若年者の雇用対策、13億ユーロの新プラン

カテゴリー:雇用・失業問題若年者雇用人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2009年6月

サルコジ大統領は2009年4月24日、若年者の失業率の悪化を受けて、総額13億ユーロ(およそ1700億円)にのぼる緊急雇用対策を発表、6月1日から実施した。26歳未満の若年者を対象とする職業訓練、見習い、熟練化契約による資格取得、特殊雇用契約による雇用促進が目的。2010年6月までに、若年者50万人以上の雇用を目指す。計画の主な内容は以下の通り。

職業訓練支援

見習い訓練(注1)で採用された若年者の職業訓練に対する国の支出を1億ユーロ増額する。また、2009年秋以降、雇用局(Pôle emploi)に求職者登録している若年者に職業能力の向上を目的として職業訓練を受講させる。5万人の若年者の参加、3億3000万ユーロの支出を見込んでいる。

見習いを採用した企業に特別助成金

従業員数50人未満の企業が、見習い訓練生(apprenti)を採用した場合、1800ユーロの特別助成金を支給する。この特別助成金は、見習い契約の署名時に半分、残りの半分は6カ月後に支払われる。財政支出は、7000万ユーロの見込み。

熟練化契約(contrat de professionnalisation)(注2)の促進

26歳未満の若年者を熟練化契約(資格取得を目指し職業訓練を受けながら就業する雇用契約)によって採用した企業には、1000ユーロの特別助成金を支給する。バカロレア(大学入学資格相当)を持たない者を採用した場合には、2000ユーロの特別助成金を支給する。2009年6月1日から2010年6月1日の間に、17万件の熟練化雇用契約が締結されることを目指す。特別助成金の支給総額は、2億2600万ユーロの見込み。

研修生をCDI(期間の定めのない雇用契約)で採用

2009年4月24日より前から研修している若年研修生(stagiaire)をCDIで正式に採用した企業に対し、3000ユーロの特別助成金を支給する。助成金は、採用時に1500ユーロ、6カ月後に1500ユーロと、2回に分けて支払われる。この措置にかかる費用は1億5000万ユーロ(1年間)、5万人の若年研修生がCDIで採用されると見込んでいる。また、現行制度下では、研修生は3カ月目から報酬を得ることになっているが、2009年夏までに、2カ月目から報酬を得られるよう法律を改正する。

セカンド・チャンス学校の定員増

学業修了証を取得できずに学校教育制度から離れた者を対象に再教育の機会を与える、セカンド・チャンス学校(Ecoles de la Deuxième Chance)の定員を、2010年までに現在の4800人から7200人増員し12000人とする。政府は、同制度を地域圏との協力の下で実施し、費用の3分の1を負担、2600万ユーロの支出を見込んでいる。

特殊雇用契約の利用促進

長期失業者など、就職困難な者をパートタイム(最低週20時間)かフルタイムで雇用する特殊雇用契約である「雇用主主導契約(Contrat Initiative Emploi)」で採用される若年者を、2009年下半期に5万人増加することを目指す。同契約は、雇用期間は無期から24カ月以下の有期で、その間に企業内指導員による研修や職業訓練を任意で受けることができる。被用者には法定最低賃金(SIMIC)以上の報酬が支給され、国はその一部(最高でSMICの47%)を負担する。採用した企業は、社会保険料の雇用主負担が一部免除される。財政負担は、1億5000万ユーロ増加すると政府は見込んでいる。

さらに、非商業セクター(主に地方公共団体など)が、3万人の若年者を特殊雇用契約で採用するという目標も盛り込まれた。就業活動の経験を積ませ、後に商業セクターにおける就職を有利にすることを目的としている。この特殊雇用契約による採用にかかる費用の9割を国が負担し、2億3000万ユーロの支出が見込まれている。

社会保険料雇用主負担ゼロ制度(dispositif Zéro charges)の適用を拡大

現行では、従業員数10人未満の企業が、新たに従業員を採用した場合、ある一定の条件下で、国が助成金を支給するというかたちで、社会保険料の雇用主負担を完全に免除している。今後は、見習い訓練生(apprenti)を採用した企業は、企業規模にかかわらず、同制度の適用を受けることが可能となる。期間は、2010年6月30までの1年間。財政支出は1億ユーロを見込んでいる。

2009年4月のDARES(雇用省統計局)の報告(注3)によると、2007年第4四半期に18.3%だった若年者の失業率は、2008年同期には20.4%にまで上昇する見込み。サルコジ大統領は、「何もしなければ、さらに17万から22万人もの若者が2010年度末までに職を失うであろう」とし、事態が深刻であることを強調、「政府には、対話する準備ができている。共に働こうではないか」と、地域圏と労使代表の動員を呼びかけた。

企業側が、企業負担を軽減する今回のプランに賛成している一方で、労組側は「確かに若年者の雇用対策は必要である。だが、既存の制度を財政面だけでカバーするだけのプランは不十分であり、これまでにない大規模な消費支援プランも必要だ。これでは、この30年間で実施されてきた若年者雇用対策と同様、失敗に終わる可能性が高い」という見解を示している。

参考レート

  • 1ユーロ(EUR)=136.72円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2009年6月11日現在)

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