若年失業者支援に重点
―2009年度予算案

カテゴリー:雇用・失業問題若年者雇用人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2009年6月

政府は4月下旬、2009年度の予算案を発表した。不況下で失業者が急増している状況を受けて、雇用対策の拡充をはかる内容。若年長期失業者25万人に対する雇用・訓練機会の提供などに31億ポンドを投入して、失業状態の長期化の防止に重点が置かれている。

失業率7.1%、失業者221万5000人

統計局が5月に発表した雇用関連統計によれば、09年1-3月期の失業率は前10-12月期から0.8ポイント増の7.1%、失業者数は24万4000 人増と前期(14万6000人)を大幅に上回る増加によって221万5000人となり、1997年以来の高水準に達した。男性失業者が15万5000人増 の133万6000人、女性が8万9000人増の88万人で、男性の増加が顕著だ。また地域別には、製造業を主要産業とする北部の諸地域(West Midlands、North Eastなど)や金融業の集中するロンドンなどで失業率が高まっている(8~9%)。同期の剰員整理解雇者数(redundancy)は28万6000人 (対前期比2万7000人増)、また4月の求職者給付申請者数は151万人(対前月比5万7100人増)で、いずれも増加が続いているが、増加幅は前月に 比べて縮小している。

1-3月期の就業者数は2920万人(就業率は74.1%)で、前期からは15万7000人減(0.5ポイント減)、フルタイム労働者の16万人 減に対して、パートタイム労働者が3000人増加している。また、減少分の8割にあたる12万3000人を18~24歳層が占めている。求人件数は、 2‐4月期に前期比5万1000件減の45万5000件となり、金融業(1万7000件減)を筆頭に、産業全般で減少がみられた。

なお、統計局が4月下旬に発表した1-3月期のGDP成長率は対前期比マイナス1.9%と3四半期連続のマイナス成長となった。建設業や流通・宿 泊・飲食店業などでは、前期より下落幅が縮小しているものの、製造業では6.2%減と前期(10‐12月:4.9%減)を上回るマイナス成長が続いてい る。

全ての18~24歳長期失業者に雇用・訓練

こうした状況をうけて、政府が4月下旬に発表した09年度予算案は、景気・雇用対策に重点を置いたものとなった。政府自らが「雇用のための予 算」("Budget for Jobs")と呼ぶ今回の予算案は、昨年11月に示された予算編成方針(Pre-Budget Report-(当機構海外労働情報2008年12月参照)以降の雇用状況の急速な悪化を反映して、雇用対策関連予算を13億ポンドから31億ポンドに大きく拡大した内容となった。対策の目玉は、12カ月以上 失業状態にある全ての18~24歳層に、助成金付き雇用(guaranteed job)、訓練もしくは企業等での就業体験(work placement)の機会を提供するというもの。新たに設置される10億ポンドの基金(Future Jobs Fund)に対して自治体や非営利団体等からの申請(注1)を募り、対象者一人あたり6500ポンドを上限に資金を 提供する。2010年1月からの実施で15万人までの雇用・訓練支援を見込んでおり、うち5万人分は、特に雇用状況の厳しい(失業率が全国平均を1.5ポイント 以上上回る)地域の長期失業者などに充てる。同時に、同じく若年長期失業者を対象として、介護分野での1500ポンドの助成金付き雇用・訓練により5万人、ま た成長が見込まれる産業分野(宿泊・飲食店業、旅行業など)で公的訓練と2000ポンドの助成金付き雇用により同じく5万人、計10万人の雇用創出をはか る。この他、失業者の急増に対応した失業者向けサービス(就業支援および給付)の維持に17億ポンドを充てる。

さらに、剰員整理手当(redundancy pay)の算定に用いる週当たり賃金の法定上限額を、週350ポンドから380ポンドに引き上げる(注2)。11月の段階では盛り込まれていなかったこの引き上げは、政府が労働組合との間で実施を合意していたとされるものだ(注3)。一方、労使やシンクタンクなどがドイツ、フランスなどの事例に倣って導入を提言していた、雇用維持のための操業短縮の実施企業に対する賃金助成制度は、今回の予算には盛り込まれなかった(当機構海外労働情報2009年3月参照)。

参考資料

参考レート

  • 1英ポンド(GBP)=156.91円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2009年6月4日現在)

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