失業保険制度、4月1日から新制度開始

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2009年5月

政府は2009年3月30日、失業保険給付に関する2008年12月23日付の全国全産業協定を承認、4月1日から新制度を施行した。同協定は、失業保険制度を運営する労使が、制度の見直しを求める政府の要請を受けて交渉を重ねた結果、加入期間の緩和や給付期間の条件の改正について合意に達したもの(注1)。MEDEF(フランス企業運動)、CGPME(中小企業経営者同盟)及びUPA(手工業連合)の使用者側3団体は協定に署名したものの、労組側は主要5団体のうちCFDT(フランス民主主義労働同盟)のみの署名となったが、政府がアレテ(行政命令)で承認したことにより、同協定は全国一律に強制力をもち、全労働者に適用される。主な改正点は以下の通り。

給付期間のカテゴリーを一本化

旧制度では、保険加入期間と労働者の年齢により、失業保険給付期間を7カ月、12カ月、23カ月、36カ月の4つのカテゴリーに分けていた。このため、加入期間の長い労働者や50歳以上の高齢労働者が有利となる傾向が強かった。新制度では、この4つのカテゴリーを一本化し、給付日数を原則、加入期間日数と同じとする。ただし、50歳未満は最長24カ月、50歳以上は36カ月を限度とする。なお、給付額については、直前の月収の57.4%相当額で変更はない。

失業給付を受けるための必要最低加入期間の緩和

旧制度では、「離職前22カ月間に6カ月以上の加入期間」が必要であったが、新制度では、「離職前28カ月間に4カ月以上」を必要最低加入期間とする。ただし、失業保険給付を受けた後に再就職し、12カ月以内に再び失業した場合は、「6カ月以上の加入期間」が必要となる。この改正の背景には、職業経験が少なく有期や派遣労働などの不安定な労働条件下で働かざるを得ない若年労働者が、金融危機以降の景気後退の影響を最も強く受けているという現状があるとされる。

保険料率を毎年2回見直す

失業保険制度の保険料率を、1月1日と7月1日の2回見直す。具体的には、改定日直前の四半期に、失業保険制度が5億ユーロ以上の黒字を計上していた場合、雇用主負担分、被用者負担分ともに、保険料率を引き下げる(注2)。失業保険制度の累積赤字が、保険料収入総額の1カ月分を下回った場合も、保険料率を引き下げる。ただし、保険料率の引き下げは、年間で雇用主負担分と被用者負担分を合わせて、0.5ポイントを上回ることはない。

季節失業者の受給申請回数制限を撤廃

観光産業における季節失業者でも、一定の条件下で、失業保険制度による失業給付を受けることができる。旧制度ではこの受給申請を3回までとしていたが、新制度では回数制限を撤廃する。

失業保険制度を管理・運営するUNEDIC(全国商工業雇用連合)(注3)によると、新制度によって、失業保険の給付を受ける者は約10万人増加する。CFDTは、これまでの2~3倍もの失業者が給付を受けられると期待を寄せているが、CGTは、給付を受けられる失業者が約7万人増加する一方で、16万8000人の失業者が受給期間を短縮されることになると懸念を表明している。さらに、UNEDICによれば2008年の1カ月当りの保険料収入総額は約25億ユーロ、単年度黒字はおよそ46億ユーロに及び、累積赤字もかなり減少していることから、新制度下では保険料率の引き下げが予想される。しかし、労組側からは、最近の労働市場の急激な悪化で、財源への影響が出ることを懸念する声もあがっている。

参考レート

  • 1ユーロ(EUR)=131.05円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2009年5月7日現在)

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