操短手当の申請、70万人突破
―2月の失業率は8.5%に

カテゴリー:雇用・失業問題非正規雇用統計

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  • 国別労働トピック:2009年4月

金融危機に端を発する昨年来の景気低迷の影響が、ここ数年順調な回復基調にあった雇用指標にも及んできた。低下傾向にあった失業率(季節調整前、国内基準)は、昨年12月以降上昇に転じ、2月の失業率は8.5%、失業者数は355万2000人に及んだ。雇用情勢の急激な悪化を背景に操業短縮手当の申請も急増しており、2月の対象労働者数は70万人を超えた。

失業率、12月から上昇へ

失業率(季節調整前)は昨年11月まで低下を続けてきたが、12月に上昇に転じ、前月比0.3ポイント増の7.4%、今年1月には1.0ポイント悪化して8.3%と、一気に8%台まで跳ね上がった。連邦雇用庁がこのほど公表した2月の失業率は、前月よりさらに0.2ポイント上昇し、8.5%となった(図1)。地域別では、東独地域(14.1%)が西独地域(7.0%)のほぼ2倍だった。失業者数(季節調整前)の推移をみると、08年11月時点では298万8000人と300万人を割っていたが、その後310万2000人(12月)、348万9000人(09年1月)、355万2000人(09年2月)と漸増している。1月から2月の失業の増加幅がある程度抑制されたのは、操業短縮手当制度の活用が進んでいるためとみられている。

他方、失業の増加に応じて就業者数も減少に転じており、4084万人(08年11月)から、4058万人(09年1月)、3985万人(09年2月)とわずか2カ月間でほぼ100万人減少した。なお、ILO基準による季節調整後の失業率は、1月に7.3%、2月に7.7%だった。

失業率の推移

出所:連邦政府ウェブサイト ※数値は原数値

操短手当の適用範囲拡大、有期・派遣労働者にも

失業の増加に伴い、操業短縮手当制度(以下、操短手当とする)の活用が急増している。制度は1969年に創設されたもので、企業が経済的要因等により「操業短縮」を行って労働者の雇用を維持する場合、企業が連邦雇用庁に申請すれば、「操業短縮」に伴う賃金減少分の一部(減少分の60%、扶養義務がある子供を有する場合は67%)が補填される。手当は、(1)事業所内で操業短縮について合意があること(2)経済的理由等やむを得ない事由による操業短縮であり、それを回避するあらゆる措置を講じたこと(3)従業員の3分の1の労働者が10%以上の給与の減少があること(4)事前に操業短縮を行う旨を連邦雇用庁に申請すること――を要件として、支給される。

政府は、金融危機後の一連の景気対策で、この制度の拡充策を講じた。第1次景気対策ではまず、今年1月から2009年末までの時限措置で、これまで12カ月だった最長支給期間を18カ月に延長した。さらに2月20日に連邦参議院で可決した第2次景気対策では、2010年末までの時限措置で、(1)操業短縮に適用される社会保険料の半額を国が負担する(操短期間中に職業訓練に参加する労働者については、全額国が負担する)(2)経済的かつ不可避な事由に基づいて労働者の1カ月の総報酬額の10%以上が削減されれば「操業短縮」の要件を満たすこととし、対象労働者を「企業の全従業員の3分の1以上」とする従来の要件を撤廃する(3)派遣労働者及び有期労働者にも制度適用する――など適用範囲拡大を中心とする制度拡充を盛り込み、2月に遡って実施されている。

操短手当の申告件数は、ここ数カ月で大幅に増えている(表1)。申請企業数でみると、2008年9月には僅か1491件だったが、2008年12月には1万7777件(このうち、景気悪化を理由とするものは6291件)、2009年2月には1万9793件(同、1万6870件)に増加した。対象労働者数でみるとこの傾向は一層浮き彫りになる。昨年9月には2万7034人に過ぎなかったが、12月には40万3989人(このうち、景気悪化を理由とする対象労働者数は29万5502人)、今年2月には72万3871人(同、70万38人)に膨れ上がった。産業別では製造業の申請が突出しており申請企業数全体の5割強を占めた。

連邦雇用庁は、申請ベースのみならず、昨年12月までの支給(実績)ベースの数値も明らかにしている。それによると、2008年12月の支給件数は、企業数ベースで1万7315件(うち景気後退を理由とするものが6864件)、労働者数ベースで27万472人(同、20万780人)だった。労働時間の短縮割合別に支給対象労働者数の内訳をみると、50%未満の労働時間短縮対象者が8割を超え大半を占めた。

ドイツは今年1月から雇用保険料率を引き下げたばかりだが、連邦雇用庁のワイス長官は、「これまでの蓄積で170億ユーロの任意積立金があるものの、このペースだと今年度半ばには財源が枯渇する可能性も考えられる」などとコメントし、操短制度活用が進むなかで連邦雇用庁の財政状況への懸念を明らかにしている。

出所:連邦雇用庁ウェブサイトリンク先を新しいウィンドウでひらく Statistische Auswertungen zum Kurzarbeitergeld:Februar 2009 Tabelle 03 04

注:2009年2月の数値は暫定値。

参考

  • 邦雇用エージェンシーHP
  • 海外委託調査員月例報告
  • 連邦政府HPv

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