厳しさ増す2009年の雇用情勢

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2009年4月

金融危機の影響は中国の雇用市場にも打撃を与えている。中国社会科学院によれば、中国都市部の失業率はすでに9.4%にまで達しているとの見方もある。この数値は、政府が今年度当初発表した2008年都市部の登録失業率4.0%の2倍以上に相当する。

中国社会科学院人口・労働経済研究所の張副所長は2008年12月19日に公表した『社会白書』に関し、「新規大卒者の就職が特に深刻で、2009年には610万人大卒者の約4分の1に当たる150万人前後の就職が困難になると見られている。しかし、更に厳しいのは農民労働者問題」とコメントしている。さらに同副所長は、「現在の状況は主に輸出指向型企業のリストラ、営業停止、倒産等に起因しており、多くの農民労働者が予定を繰り上げて帰郷する意向を持っている」と述べた。現在、中国には約2億3000万人の農民労働者がいるとみられているが、このうち約1億3000万人は出稼ぎ労働者である。

中央農村業務指導室の陳主任は2月2日、農民労働者を比較的多く送り出している15の省、150の農村に対して実施したサンプリング調査に言及し、「旧正月前に故郷に戻った農民労働者は38.5%いたが、このうち60.4%が旧正月のための通常の帰郷であり、旧正月が過ぎればまた都市部に戻り仕事を始める人々だった。つまり、旧正月前に帰郷した農民労働者のうち39.6%は仕事を失ったか、あるいは仕事がみつからず故郷に戻ったということを意味している。この数字から推測すると、1億3000万人の出稼ぎ農民労働者のうち、約2000万人の農民労働者が失職している可能性がある」と分析している。

失業問題の深刻さは2008年の第3四半期から次第に顕現化してきた。人的資源・社会保障部の張副部長によると、2008年9月まで基本的に安定していた中国の雇用情勢は、10月に入り3つの変化が生じた。まず、都市部で新規就職者数の増加が鈍った。次に企業の労働需要に減少が見られ、その後企業の既存ポストの喪失が顕在化した。

第11期全国人民代表大会第2回会議の席上、人的資源・社会保障部の尹部長は中国の現在の雇用情勢について「中国の経済成長がスピードダウンしたことで、雇用情勢に直接的な影響が生じている。2008年の第4四半期の都市部の登録失業率は4.2%に達し、過去3年間で最悪の水準となった。農民労働者の失業はより深刻である。また、モニタリングしている15の重点都市では、昨年第4四半期から約40%の企業で雇用ポストが減少した。この数字から推算すると、全国で約300万人分の雇用が失われたことになる」と述べた。厳しい雇用情勢に直面し、中国政府もこの事態に極めて高い関心を寄せている。

政府は第11期全人代表第2回会議の政治業務報告において、2009年の経済成長率は8%前後、都市部の登録失業率は4.6%程度になるとの予測を示している。

資料出所

  1. 『中国労働保障報』2009年2月4日第3版
  2. 『北京シン報』2009年3月10日第2版他
  3. 政府広報リンク先を新しいウィンドウでひらく

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