新規外国人労働者の雇用に対し制限措置
―バイ・アメリカン条項に関連して

カテゴリー:外国人労働者

アメリカの記事一覧

  • 国別労働トピック:2009年4月

政府が2月に決めた2年間で350万人以上の雇用維持・創出をめざす総額7872億ドルの景気刺激策(注1)は、公共事業で米国製工業製品の調達を義務づける条項(バイ・アメリカン条項)を含んでいる。この条項に対しては、保護主義だとの批判も出ている。これに関連し、あまり知られていないが、「アメリカ人労働者を雇用する法(the Employ American Workers Act)」も同時に成立している。この法律は政府の支援を受けた企業が、外国人労働者を雇用するためにアメリカ人労働者を解雇したり、新規に雇用する場合に外国人を優先することを禁じている。米国国土安全保障省市民権・移民サービス局は3月20日、同法に基づき、H-1Bビザ保有外国人労働者を新たに雇用する場合の必要要件を公表した(注2)。

景気刺激策を目的とする「アメリカの経済回復・再投資法」が上院で議論された際、バーナード・センダー議員(無所属・バーモント州選出)は1500億ドルの政府支援を受けた12の金融機関が過去6年間にアメリカ人従業員を解雇し2万1800人以上のH-1Bビザ保有の外国人労働者を雇用し、しかも今後6年間有効となる新規の2万1000人分のH-1Bビザ発給を申請していることを指摘した。その上でアメリカ人をレイオフして外国からの人件費の安い労働力を採用することがないような措置が必要だと強調した(注3)。チャールズ・グラッセリ上院議員(上院金融委員会・共和党・アイオワ州選出)の支援もあって、アメリカ人労働者を雇用する法が成立した。

市民権・移民サービス局がしめした指針は次のような内容である。「資金需要と不良資産救済プログラム」(TARP)などに基づき政府の支援を受けた企業が、新規にH-1Bビザ保有外国人労働者を雇用すれば、その企業はH-1Bビザ依存企業と見なされる。通常、H-1B労働者依存企業というのは、従業員規模50人以上の企業で全従業員のH-1Bビザ労働者の占める割合が15%以上である企業を指すが、今回の措置では従業員比率に関係なく政府支援を受けた企業が対象となる。H-1B労働者依存企業は、労働条件申請の際に連邦労働省の追加的な雇用証明の認証を受けなければならない。この追加的な審査によれば、事業主がH-1Bビザ保有労働者を雇用したい場合、申請に先立つ90日の間に、当該職務に相当するアメリカ人労働者を解雇した実績があると認証を受けられないことになる。なお、既に雇用されている外国人労働者に関しては影響を受けない。

同法の実施にともない採用内定を取り消される外国人労働者が出てきている。「ウォール街から締め出される外国人就労者」と伝えるメディアもある(注4)。また、景気刺激策による雇用創出の大きな柱に、建設業関連へ1040億ドルの資金投入が盛り込まれている。見込まれる雇用機会創出のうち、7人に1人、約15%が不法就労者向けになるとの指摘があり、何らかの対策が必要であるとの声があがっている(注5)。対策のひとつとして、事業主による被用者確認の電子申請制度(E-Verify)強化が挙げられる。これは、事業主が、被用者の就労資格に問題がないか雇用する前にチェックするためのシステムである。不法就労外国人を雇用した場合の処罰が厳格化される傾向も見られる。

なお、H-1Bビザの2010年発給分の募集は4月1日から開始されるが、発給予定の人数枠は例年通りだとされている(注6)。

参考レート

  • 1米ドル(USD)=100.78円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2009年4月6日現在)

2009年4月 アメリカの記事一覧

関連情報