中高年齢者の就業促進策

カテゴリー:高齢者雇用

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  • 国別労働トピック:2009年12月

ダルコス労働大臣は11月3日、従業員数50人以上の企業を対象に、中高年齢者(55歳以上65歳未満)の就業促進に関する行動計画を盛り込んだ労使協定を締結しない場合には罰金を科すことを、当初の予定通り2010年1月1日から実施すると発表した。同措置は、2008年12月に成立した「2009年社会保障制度財源法projet de loi de financement de la Sécurité sociale pour 2009」に盛り込まれたもの。計画を予定通り実施すると宣言し、「2010年までに55歳以上65歳未満の就業率を50%にする」というEUの数値目標を目指して、低水準の続く中高年齢者の就業率を向上させるという政府の姿勢を改めて強調した。

従業員数50人以上の企業に、雇用促進策を盛り込んだ労使協定を義務化

中高年齢者の就業率の向上を目指すフランスは、2006年6月に新たな中高年齢者雇用促進プラン「Plan national d’action concerté pour l’emploi des seniors 2006-2010」を発表し、(1)中高年齢失業者を対象とした期間の定めのある雇用契約の新設、(2)60歳を過ぎても就労を継続する者に対する年金割増し率の引き上げ、(3)50歳以上の従業員を解雇した際に企業に課せられる税金(ドラランド拠出金)の廃止、(4)中高年齢失業者の求職活動免除制度の段階的廃止――などを予算案や社会保障制度財源法に盛り込み、これまで順次実施してきた(注1)。

「2009年社会保障制度財源法」では、従業員数50人以上の企業に対して、中高年齢者の就業促進に関する行動計画を盛り込んだ労使協定の締結を促すとともに、これに応じない企業(公営企業も含む)には、総賃金の1%相当額を罰金として科すことが盛り込まれた(87条)。なお、企業から徴収した罰金は、老齢年金公庫(CNAV:Caisse Nationale d' Assurance Vieillesse)の財源に充てられることになる。

労使協定には、55歳以上の従業員の雇用維持と50歳以上の中高年齢者の採用についての数値目標を明示しなくてはならない。また、以下の中高年齢者就業促進策のうち、少なくとも3項目を盛り込まなくてはならない。

  1. 中高年齢労働者の採用方針
  2. 中高年齢労働者の業務内容の見直しを前倒しする(高年齢でも可能な業務への移行を早くから準備する)
  3. 労働条件の改善(重労働の軽減など)
  4. 職業能力の向上及び職業訓練への参加
  5. 労働時間の変更や、就業から年金生活への段階的移行など引退プロセスの改善
  6. チューター制の導入など、高年齢労働者から若年労働者への技術の伝承

こうした行動計画を盛り込んだ労使協定の有効期間は、最長で3年間。これは、一定期間の後に、中高年齢者の就業状況などを検証し、行動計画がうまく機能していない場合に、その見直しを促すためとされる。

進まぬ中高年の就業促進

1983年に公的年金制度の支給開始年齢が65歳から60歳へ引き下げられたことなどから、フランスの中高年齢者の就業率は、1980年代以降、35%前後という低水準で推移していた。2001年3月、EU首脳会議(ストックホルム)で、「2010年までに、55歳以上65歳未満の就業率を50%以上にする」という数値目標が設定されたものの、景気の低迷に伴い、特に若年層の失業率が著しく悪化したフランスでは、若年者の失業対策に追われ、中高年齢者の就業促進策はなかなか進まず、2005年の55歳以上65歳未満の就業率は38.7%と、EUの数値目標から程遠い数字であった。

目標達成期限まで5年となった2006年6月、フランス政府は2010年までの5年間における中高年齢者の就業促進策を発表し、順次、実行に移してきた。しかし、2008年の55歳以上65歳未満の就業率は38.2%で、2005年よりも低下している。

一方、他のEU諸国では、2001年に数値目標が設定されてから、中高年齢者の就業率が上昇している。EU15カ国(旧加盟国)の55歳以上65歳未満の就業率は、2000年では38.3%であったが、2008年には47.3%まで上昇した。特に、2000年時点でフランスに近い水準であったドイツやオランダ(いずれも37.6%)は、2008年には、それぞれ、53.8%、50.7%まで上昇し、既にEUの目標を達成している(注2)。

参考

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