若年者支援策を発表

カテゴリー:若年者雇用

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  • 国別労働トピック:2009年11月

雇用情勢の悪化が続くフランスではサルコジ大統領が、2009年9月29日、高失業率傾向が特に深刻な若年者に対する支援策を発表した。今回の支援策は、同大統領が、同年4月24日に発表した若年者の緊急雇用対策プランを補足するもの(注1)。

DARES(雇用省統計局)によれば、2008年第1四半期に7.1%であった失業率(海外県除く)は、同年第4四半期には7.8%、2009年第2四半期には9.1%にまで上昇している。特に、15歳以上25歳未満の若年者の失業率は、2008年第1四半期で既に17.4%に達していた。以後、四半期毎に18.7%、19.1%、20.7%、22.3%と上昇し続け、2009年第2四半期には、23.9%にまで達した。

同大統領は、フランスが数十年も前からヨーロッパ諸国の中で若者の失業者が最も多い国となっているにもかかわらず、有効な対策を講じてこなかったとし、「若者の一人一人の自立を可能とする」政策を実施する必要があると主張した。昨年からの景気悪化の影響を受け困難な状況にある若者の自立を促すことを目的とした支援策は、就業だけなく、生活や学業など多岐にわたる内容となっている。主な内容は以下の通り。

RSA(積極的連帯所得手当)の拡大適用

2009年6月からフランス全土(海外県を除く)でスタートした、日本の生活保護制度に相当する「積極的連帯所得手当(RSA : revenu de solidarité active)」の支給対象者は、原則として25歳以上(扶養する子供がいる場合は25歳未満でも可)であるが、これを「18歳以上25歳未満で、過去3年間に、2年間(3600時間)以上就労していた者」にまで拡大する。

同制度は、1988年に導入された「社会参入最低所得手当(RMI:Le revenu minimum d'insertion)」と、「単身手当(API)」及び「雇用手当(PPE)」に代わる制度で、「働かずに生活保護を受けるよりも、少しでも働いた方が収入増加につながる制度」として、一部の県での試験的導入を経て、2008年12月1日の法律により全国的導入が決定、2009年6月1日から実施された(注2)。

今回の適用拡大措置により、16万人の若年者がRSAの適用対象となり、これに対して2.億5000万ユーロの支出を政府は想定している。

Civis(社会活動参入契約)の拡充

16歳から25歳の、バカロレア(大学入学資格)以下の低学歴者を対象に、1年間(更新可能)の個別指導や職業訓練、研修などを通じて就業支援を行う「社会活動参入契約(Civis: Contrat d'insertion dans la vie sociale)」の活用を促進する。

現在、Civisを利用した18歳以上の若者には、最高で年間900ユーロの手当が国から支給されているが、この額を引き上げる。具体的な額は未定だが、Civis関連に8000万ユーロの支出を政府は想定している。

「社会奉仕活動(service civique)」の促進

例えば、赤十字などの公共・公益機関において市民への奉仕活動を行う「奉仕活動(service civique volontaire)」を促進させる。フランスでは、2001年まで、成人男性に1~2年間の軍又は公共・公益機関での役務が義務付けられていた。同制度は、若年者の雇用を確保し、職業活動の経験をもたせるという意味を持つとともに、社会規範を習得する機能も担っていた。

同制度の廃止後は、任意で、公共・公益機関での「奉仕活動」に参加することができ、期間は、通常6カ月から12カ月間で、低額ではあるが報酬も支払われ、各種社会保険制度にも加入できる。しかし、若者の間にはあまり浸透していない。

今回の支援策では、2010年に1万人の若者をこの「奉仕活動」に従事させることを目指し、4000万ユーロの予算を計上する。

16歳から18歳の低学歴若年者に対する支援

学業修了書を得られずに義務教育を修了した若者(16~18歳)全員に、職業訓練を受ける義務を課す。教育制度から脱落した者を職業訓練制度に組み込むことで、職業資格の取得を促進させることが狙いで、地方の進路指導プラットフォーム(plates-formes régionales d’orientation)を中心として、大学区本部、見習訓練センター(CFA)、地域ミッションセンター(missions locales)の連携を強化し、2010年に3000万ユーロの予算を計上する。

企業による学費支援の検討

卒業後一定期間、その企業で働くことを条件として、企業が学生の学費を負担する制度の導入にについて、労使で検討する。経済的な理由から、学業の継続を断念する若者を減らすと同時に、企業にとっても、必要とする人材を早期に確保することが目的。

今回の若年者支援策について、政府は、2010年だけで4.6億ユーロの支出を見込んでいる。これらの支援策は、2010年の社会保障予算案などに盛り込まれ、国会審議を経た後、来年から施行される見通しである。

資料

参考レート

  • 1ユーロ(EUR)=134.56円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2009年11月5日現在)

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