移民提言委員会、さらなる制度引き締めを答申

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2009年10月

移民制度に関する政府の諮問機関である移民提言委員会(Migration Advisory Committee)は8月19日、内務相からの諮問を受けて提出した報告書において、外国人専門技術者の受け入れに関する制度の厳格化を答申した。

移民提言委員会は、2008年から新たに導入された移民制度である「ポイント制」(外国人を入国目的や専門技術等に区分して、年齢や学歴などに基づく入国資格を定める制度)に関連して設置された機関で、国内で専門技術者の不足が生じている職種(該当する場合、受け入れ条件が緩和される)の分析をはじめ、制度改正や移民制度に拘わる課題などについて政府からの諮問を受ける。

今年2月の内務相による諮問は、金融危機による雇用状況の急速な悪化に対応するために、移民労働者の受け入れ制限を想定したもの。委員会に検討を求めていたのは、(1)専門技術者の受け入れを不足職種のみに絞る場合の経済への影響、(2)移民労働者の被扶養者の経済への貢献と労働市場における役割(3)経済状況の変化への対応のため、高度専門技術者の受け入れ制度について今後どのような変更が必要か――の3点だが、委員会は今回の報告書で、このうち(1)と(2)に関する検討結果を取りまとめた(残る1点については10月に答申の予定)。

現在、外国人専門技術者の受け入れには、委員会が人材不足と認める職種に関するもののほか、国内での一定期間の求人活動(「労働市場テスト」)により人材確保の困難さを証明した場合、また多国籍企業による国境を越えた企業内異動などが、主なルートとして認められている。これを不足職種のみに限定することについては、委員会は否定的な立場を示したものの、より安定的な制度構築を理由として、別途、以下のような基準の厳格化を答申した。すなわち、(1)受け入れ先企業における給与水準に応じて与えられる点数に関して、基準となる金額を引き上げること、(2)労働市場テストに要する求人期間を現行の2週間から4週間に延長すること、(3)企業内異動による入国者に課している勤続年数の資格要件を6カ月から12カ月に延長すること、またこのルートによる滞在者に永住許可の申請を認めないこと(通常は5年の滞在で申請が可能)――など。ただし同時に、大学院卒の資格に付与される点数を現行より引き上げることや、公共サービスにかかわる一部職種に従事する予定の申請者への加点など、部分的な制度の緩和も答申している。さらに今後の課題として、専門技術者の資格要件(全国職業資格(NVQ)のレベル3相当の職業資格、大学卒業もしくは大学院卒資格)に相当する可能性のある他国の職業資格の検討、実施体制や方法の見直しなどについて、政府に検討を求めている。

一方、移民労働者の被扶養者の就労に関しては、当該移民労働者に12カ月以上の滞在許可が発行されていれば、現行制度では特に制限は設けられていない。委員会はデータ不足のため暫定的な結論であると留保しつつも、被扶養者として入国を認める際の条件は限定的であり、実際に就労しているのは半数にすぎないこと、さらに多くは資格等の有無にかかわらず未熟練職種に従事していることなどから、規制強化を行うべき十分な理由は認められないとしている。

委員会の報告書を受けて、内務相は9月初め、一連の提言のうち(1)労働市場テストにおける求人期間の4週間への延長、(2)企業内異動にかかわる勤続期間の12カ月への延長、(3)受け入れ先企業での給与水準に関する加点基準の下限の1万7000ポンドから2万ポンドへの引き上げ――について、来年にも実施する方針を示している。

参考資料

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  • 1英ポンド(GBP)=143.54円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2009年10月5日現在)

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