雇用創出が5年ぶりの最低水準に
―大統領の目標、不可能に
統計庁が発表した11月の就業者数は2381万6000人、就業者数の対前年比増減数で表す「雇用創出」は7万8000人(表1)となり、2003年12月に4万4000人を記録して以来の最低の水準となった。2008年の雇用創出は、第1四半期21.0万人、第2四半期17.3万人、第3四半期14.2万人、10月9.7万人、11月7.8万人と、金融危機をはじめとした景況悪化の影響から減少傾向に歯止めがかからない。李明博政権が目標とした年間20万人の雇用創出は事実上達成不可能となった。
若者・高齢者を中心に非労働力人口が増加
失業率は3.1%、前年同期比0.1ポイント上昇にとどまっているが、失業者実数は75.0万人で前年同期比1万7000人増(2.3ポイント増)となり、懸念された金融危機の影響が雇用情勢の数字の悪化となって表れはじめた。
1~3月 | 4~6月 | 7~9月 | 10月 | 11月 | |
---|---|---|---|---|---|
就業者数 (対前年比%) |
2305.1 (0.9) |
2387.1 (0.7) |
2375.2 (0.6) |
2384.7 (0.4) |
2381.6 (0.3) |
雇用創出数 | 21.0 | 17.3 | 14.2 | 9.7 | 7.8 |
失業率 (対前年比ポイント) |
3.4% (-0.2) |
3.1% (0.1) |
3.1% (0.0) |
3.0% (0.0) |
3.1% (0.1) |
失業者数 (対前年比%) |
80.1 (-5.9) |
76.7 (-3.0) |
75.2 (-0.5) |
73.6 (0.4) |
75.0 (2.3) |
出所:統計庁
さらに、雇用情勢悪化の状況は失業率に反映されない非労働力人口の推移からも知ることができる。2008年の非労働力人口の状況は表2のとおり、対前年比で増加基調が続いており、11月は1520万1000人、前年同期比35万6000人増(2.4ポイント増)となった。年齢別でみると、15~29歳の若年層や60歳以上の高齢者層を中心に非労働力化傾向の動きが顕著となっている。若年者、高齢者ともに昨今の雇用情勢の悪化の影響を強く受けている年齢層であり、よい就職機会に恵まれないことを見越したこれら年齢層が就職(及び再就職)を断念し労働市場から撤退したものとみられる。
非労働力人口 (対前年比%) |
1~3月 | 4~6月 | 7~9月 | 10月 | 11月 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1557.5 (1.8) |
1490.3 (1.7) |
1515.4 (1.9) |
1514.4 (2.3) |
1520.1 (2.4) |
||
15-29歳 (対前年比%) |
538.2 (2.2) |
537.7 (0.9) |
540.9 (1.7) |
553.1 (2.3) |
552.0 (3.3) |
|
30-39歳 (対前年比%) |
207.6 (-1.5) |
199.4 (-1.7) |
207.3 (0.6) |
201.0 (-0.5) |
202.2 (3.3) |
|
40-49歳 (対前年比%) |
172.4 (0.1) |
162.0 (0.7) |
165.9 (-1.3) |
164.0 (1.2) |
162.7 (-0.3) |
|
50-59歳 (対前年比%) |
180.6 (-0.1) |
163.3 (0.6) |
168.1 (1.4) |
163.5 (0.8) |
165.7 (-0.6) |
|
60歳以上 (対前年比%) |
458.7 (4.2) |
428.0 (5.5) |
433.2 (4.5) |
432.8 (4.5) |
437.6 (3.1) |
出所:統計庁
高齢者雇用創出策として最賃減額措置も検討
こうした中で、政府はすでに9月、若年者向けには特別雇用促進プログラムの実施を発表したが、報道によれば、労働部は60歳以上の高齢者の雇用促進のために最低賃金法を改正し、同年齢層に10%減額した法定最低賃金(時間あたり現行3770ウォン)の適用を認める方針のようだ。最低賃金は2009年1月1日から同4000ウォンへの引上げが決定しているが、減額が実施された場合60歳以上の労働者は同3600ウォンの適用が可能となる。このほか、雇用促進のため、最低賃金の適用免除が認められる試用期間を現行3カ月から6カ月に延長する案や、現行では最低賃金の算定に含めることが認められない住宅や食事などの現物給付についてもその算定に含めることを認めるなど、事実上最低賃金の引き下げにつながる内容の同法改正案の検討を政府部内で開始したと伝えられる。
最低賃金の水準については、景気が持続的に低迷する中にあって、物価上昇率や名目賃金上昇率に比べて高いピッチの上昇が続いているとの認識が一般的とみられている。李永熙(イ・ヨンヒ)労働部長官も最低賃金が韓国の経済水準に比べて急激に上がっているとし、その見直しの可能性について示唆をした経緯があった。
こうした政府の方針に対し、労働側は断固反対する旨のコメントを表明した。労働団体はこの見直しの動きを「これまで最低賃金の弾力的運用を求めてきた経済界を支援するためのものだ」と猛烈に反発している。労働側の最低賃金水準に対する考え方は、労働者平均賃金の50%水準(同4760ウォンに相当)に引き上げ、低所得層の生活レベルの底上げを行うべきとするもので従来一貫している。2008年1月1日に改定される同4000ウォンが適用される労働者数は208万5000人に上り、全雇用労働者に占める割合である影響率は13.1%と計算されている。近年正規労働者と非正規労働者の二極化などにより所得の不平等が拡大される状況にあって、低賃金労働者の最低生活を保証できる唯一の制度が最低賃金という主張である。同様に、野党では、民主労働党が今回の改正案に対し「経済危機により労働者の実質賃金が減っている中で、賃金をさらに減らすもの」と断固反対を表明している。
これに対し、近年、最低賃金の凍結を要求してきた経済界は「過度に上昇した最低賃金が若年者、高齢者や障害者など就職困難層の雇用機会を一層減少させてきた」との認識を持っており、政府の最低賃金制の見直し方針を歓迎するムードとなっている。経済団体は今回の政府の最低賃金の見直しにあたっては、地域間の生計費や賃金水準の違いを反映した地域別の最低賃金として設定されるべきとし、さらに法による毎年の改定サイクルを例えば2年以上にするなど、経済や労働市場の状況に応じて最低賃金が一層弾力的に適用されるべきだとの考えを表明している。
労働部は同法改正案の早期成立を目指しているとみられるが、喫緊の課題となっている雇用創出及び雇用促進を目的とするとはいえ、今回の見直しは労働者の基本的な労働条件である最低賃金にメスを入れようとするものであるため、あわせて見直しを予定している非正規労働者保護法の改正(正規化義務までの雇用期間の延長など)とともに、その成立にはかなりの難航が予想される。
出所
- 統計庁Web、NNA、毎日経済新聞Web
参考レート
- 100韓国ウォン(KRW)=7.28円(※みずほ銀行ホームページ2009年1月7日現在)
関連情報
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:掲載年月からさがす > 2009年 > 1月
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:国別にさがす > 韓国の記事一覧
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:カテゴリー別にさがす > 雇用・失業問題、高齢者雇用、統計
- 海外労働情報 > 国別基礎情報 > 韓国
- 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書:国別にさがす > 韓国
- 海外労働情報 > 海外リンク:国別にさがす > 韓国