3兆円に及ぶ経済刺激プランを発表
―企業支援重視に批判の声も

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2009年1月

フランス経済・財務・雇用省が11月27日に発表した雇用統計によると、10月の失業者数は200万4500人で、前月から4万6900人(2.4%)増加した。200万人を超えたのは2007年5月以来で、景気悪化の影響が雇用にも及んでいる現実が浮き彫りとなった。世界的な金融危機の中、インフレや経済成長の鈍化を危惧し、サルコジ大統領は、12月4日、「今日の活動を支援し、明日の競争力を高める」ために投資を優先した新たな経済刺激プランを発表した。2009~10年の2年間で出資総額は260億ユーロ(およそ3兆円)に及ぶ。計画の主な内容は以下の通り。

公的資金投資の追加

公共投資として、およそ105億ユーロを追加支出する。具体的には、国が40億ユーロ、公営企業が40億ユーロ、地方自治体が25億ユーロを拠出し、主に国防関連装備や大学・研究機関支援、国有財産の修復、道路・河川・鉄道といったインフラ整備など、様々な公的設備プログラムに投資する予定。2010~14年にかけて4つの新幹線(TGV)路線を建設し、欧州北セーヌ(Seine Nord Europe)運河の実現も目指す。

企業の強化

企業の資金繰りを円滑にするため、通常3年間で償還している消費税や研究開発費に充てられる法人税控除など、115億ユーロにのぼる税額控除分を前倒しで、2009年初めに一度に還付する。付加価値税(TVA)の控除についても、同様の措置をとる。ただし、「代償なくして企業の救済はありえない」とし、企業が国外移転をしないことが支援の条件とする。

自動車産業の支援

現在は、使用年数15年以上の中古車を廃棄処分して新車を購入する場合、300ユーロの補助金を支給しているが、この対象を使用年数10年以上中古車に広げるとともに手当も1000ユーロに引き上げ、営業用の軽自動車にも範囲を拡大する。また、自動車購入者への融資支援として、金融機関に対して10億ユーロ再融資する。さらに、自動車製造業者及びその請負業者には、生産工程の再編支援として3億ユーロの投資資金を提供する。

住宅投資

70000戸の公営住宅を建設するほか、07年に導入した無利子の住宅融資制度を拡充し、不動産購入の促進を図るなど、住宅関連の追加出資に18億ユーロを充てる。

低所得世帯の支援

約380万の低所得世帯に対して、2009年3月末に200ユーロの手当を支払うために、7億6000万ユーロを充てる。

政府調達に関する規制の緩和

特別な行政手続きを必要としない政府調達の上限を現行の4000ユーロから2万ユーロに、入札手続きを義務付けない政府調達額を現行の20万6000ユーロから515万ユーロ(EU基準)に引き上げる。政府調達に関する規制緩和により、中小企業が参入しやすい環境をつくることが目的。

政府は、今回の景気対策により2009年には8~11万人の雇用創出が見込めるとしている。経営者団体のMEDEF(フランス企業運動)は、企業・産業支援を柱とするプランを「景気対策を超えるもの」と歓迎しているが、労組や野党・社会党は、企業支援に偏っており労働者や低所得者への配慮及び購買力に関する政策が欠如していると強く批判している。

大統領は、「我々が通り抜けようとしている危機は、一時的な危機ではない。今回の構造的危機は、長期にわたり、経済、社会、そして政治を変えることになる。今回の危機は、非常に規模が大きく、ゆえに、対策も強固なものとしなければならない」と計画実行への強い意欲を示すとともに、景気対策の施行を担当する大臣ポストを創設し、与党・UMP党のパトリック・ドヴェジャン幹事長を経済振興策推進大臣に任命した。

今回の経済刺激プランは、特別予算法案として09年1月に国民議会の審議にかけられる予定だ。

参考レート

  • 1ユーロ(EUR)=126.15円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2008年12月18日現在)

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