最低賃金、時間あたり6.1%増の4000ウォンに引き上げ

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  • 国別労働トピック:2008年9月

韓国の最低賃金審議会はこのほど、来年1月1日から実施する最低賃金を現行の時間あたり3770ウォンから6.1%増の4000ウォンで合意した。1日8時間、週40時間労働の場合、日額で3万2000ウォン、月額で83万6000ウォンの換算となる。208万5000人に影響を及ぼすとみられ全雇用労働者に占める割合である影響率は13.1%と計算されている。

これを受けて、労働部長官は最低賃金改定案を7月3日付け官報に告示した。最低賃金法の規定に基づき労使団体は同案に異議申し立てをすることができる。異議が出なければ8月5日までに告示のとおり最低賃金案が決定される。

韓国の最低賃金は、毎年労働部長官の諮問を受けた公労使の三者構成による最低賃金審議会の審議を経て引き上げ案が議決され政府に答申される。今回は合意に至るまで例年になく長丁場の議論が行われた。

労働側は大幅な引き上げ要求、使用者側は凍結を主張

労働側は最低賃金審議会の審議に入る前から、進行する物価高による生計費の圧迫を理由に、大幅な引き上げを目指した。労働側は、最低賃金の引き上げが所得格差の解消のための有効策となると考え、労働者平均賃金の50%水準に最低賃金を引き上げ、低所得層の生活レベルの底上げを行うべきだとの従来の主張を繰り返した。この主張に則り、現行水準から26.3%の引き上げとなる4760ウォンを要求した。

これに対して経営側は、原油高や景気の後退を理由に引き上げの凍結を強く要求した。労働組合が政治ストを打つなど社会を混乱させながら最低賃金の大幅な引き上げを要求していることに経営側は苛立ちを隠せない。特に原油高等によるコスト増に悲鳴を上げている中小企業の経営者からは賃金の引き上げは売上や生産性の伸びの範囲内に収めるべきだとし、もしそれ以上の賃上げを強いられるのであれば人員削減もやむなしという切迫した意見表明がなされている。韓国の最低賃金法(第4条)による決定基準の規定は、「生計費」「類似労働者の賃金」「類似の労働者の生産性」及び「労働分配率」となっており、労使双方の主張には一理があるといえる。「生計費が上がれば賃金も当然上げるべき」と考える労働側と「原油高と景気の落ち込みによりどこの企業も賃上げを行う余裕はない」とする経営側の意見の対立は大きく、審議の途中、労働側の代表が「相容れない意見の相違」を理由に一旦審議会のテーブルを離れるという一幕もあった。

徹夜の審議を重ねた後、全会一致の合意

このように例年になく労使の対立が大きかったため、今年は公益委員が合意に向けて精力的に働きかけをしたと伝えられる。その後の再提案では、労働側は18%増の4450ウォンを要求する一方で、経営側は 2%増の3925ウォンと、それぞれ一定の歩み寄りを示した。

最低賃金審議会の審議は労使の対立が大きいため全会一致の合意に至ることは稀で、一定の審議をした後、表決により労使いずれかの提案が採択されることが慣例となっていた。しかし今年は公益委員が主導権を発揮し、労使双方に妥協案を再三提出させるなど調整を図り、公益委員の提案も含め修正案が6回も出されたようである。審議は非公式協議を含め3日間集中的に行われ話し合いが徹夜に及んだ日もあったという。そして最終的に公益委員が提案した6.1%%増の4000ウォンで全会一致の合意となった。全会一致の合意は昨年に引き続き2回目のことである。

審議が終結した後に、最低賃金審議会の議長は「今年も昨年に続き労使の審議会委員が最終的にそれぞれ譲歩と妥協をしたことで最低賃金案の合意がなされたことは高く評価されるべきであり、この成果が国内で生じている様々な労使の対立を『対話と妥協』を通じて円滑に解決されるような道筋をつけるきっかけになれば幸いである」とのコメントを出している。

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