連邦政府、国籍取得テストを導入 

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  • 国別労働トピック:2008年9月

連邦政府は9月1日から、16歳以上のドイツ国籍取得希望者を対象として「国籍取得テスト」を義務付ける。現行の国籍取得要件は、(1)在住歴(8年以上)(2)ドイツ語力の証明(3)一定の経済力(社会扶助の対象者でないこと)(4)民主制度尊重の宣言(5)犯罪歴がないこと――の5つ。これに、国籍取得テストへの合格が新たな要件として加わる。設問は、ドイツの歴史・政治・地理・文化などの一般知識に関する310問から無作為抽出した33問。多岐選択方式で17問以上正解すれば合格となる。受験者は、州レベルで実施する「統合総合講座」を受講することで、国籍取得テストの準備が可能だ。

先駆けは州レベルのイニシアチブ

国籍取得テスト導入の動きは、2006年以降、まずは州レベルのイニシアチブとしてスタートした。先駆けとなったのはバーデン・ヴュルテンベルク州で、従来のドイツ語能力テストに加え、個人の考え方や信条に関するテストを導入。これに次いでヘッセン州が、ドイツとヨーロッパの文化、歴性、政治事情に関するテストを採用した。メルケル首相は、こうした各州の対応を「原則として」適切と判断。その後ヴォルフガング・ショイブレ内務相(CDU)が連邦の統一基準設定に乗り出し、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は、全州に国籍取得テストの実施を求める意向を表明した。CDU・CSUの当初案では、より難易度の高い設問や良心・価値観を問うものが含まれていたが、最終的には排除されて最終案に至った。

最終案をめぐっても「ドイツ人でも回答できない設問がある」「エリートだけを選抜する手続きだ」などの批判の声が上がったが、ショイブレ内務相は「運転免許取得試験ほど難しくない。国籍取得は権利・義務双方を伴って当然だ。イギリス、オランダなどのEU諸国にも国籍取得テストは存在する」とコメント。また、世論調査では、テストの導入を約70%が支持している。

設問は事前にウェブ公開

今回のテストは連邦内務省の委託を受けてフンボルト大学(在ベルリン)付属の教育制度開発研究所(IQB)が開発したもの。当初1000問を準備し、5000人を対象にトライアルを実施したうえで310問に絞った。全310問は連邦内務省ホームページ上で前もって公表している。具体的な設問は、連邦共和国憲法の名称や建国年、州の数や州都、成人年齢、初代首相、連邦議会での野党の役割、国歌の作詞者――など。また、各州が実施する講座(計60時間)では、ドイツの生活条件や国民としての権利・義務に関するより総合的な知識を得ることが可能だ。

ドイツは国籍取得について血統主義を採用していたが、2000年に国籍法を改正し、部分的に出生地主義を導入した。改正国籍法では、ドイツ国籍を持たない両親の子供がドイツで生まれた場合、少なくとも一方の親が8 年以上合法的にドイツに居住していれば、その子供がドイツ国籍を取得できる。国籍取得者は2000年に18万6688人とピークに達したが、以降減少を続け、2007年には11万3000人(前年比9.5%減)であった。なお、国籍取得者総数を2000~2006年でみると、100万人を突破している。

資料出所

  • 連邦政府発表資料(2008年7月23日)
  • 連邦統計局発表資料(2008年7月3日)
  • DEUTSCHE WELLE(2008年6月11日)
  • SPIEGEL ONLINE(2008年6月11日、7月9日)
  • 伊東直美(2008)「ドイツにおける統合政策―帰化テストの統一基準をめぐる議論から」『ヨーロッパ研究』第7号。

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