両親世帯の51%が共稼ぎ
―家族相、仕事と家庭の両立支援策の重要性を強調

カテゴリー:勤労者生活・意識多様な働き方

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  • 国別労働トピック:2008年9月

子供のいる両親世帯の51%が共稼ぎだった――連邦統計局が7月22日に発表した資料ではこうした数字が明らかになった。ドイツは「子育ては家庭で」との社会規範が根強く、欧州先進国では保育サービスの充実が遅れていた。メルケル政権は出生率の改善を喫緊の課題に掲げ、家族改革を急ピッチで展開している。調査では、保育供給率の上昇も明らかになった。今回の結果を受けてフォン・デア・ライエン家族相は、「両親世帯の半数以上が就業者であるという実態は、仕事と家庭の両立支援策の重要性を物語るものだ」とコメントした。

親子世帯のうち結婚世帯は74%に低下

統計資料は2007年3月時点の家族の実態を調べている。それによると、18歳未満の子供のいる親子世帯総数は860万世帯。形態別にみると、結婚(夫婦)世帯(74%)、一人親世帯(18%)、非婚生活共同体(8%)であった。非婚生活共同体とは、法的な形式をとらない家族を指す(注1)。この非婚生活共同体と一人親世帯を合わせた家族形態の比率は、1996年に比べ7ポイント上昇した。逆に、結婚世帯は同年に比べ6ポイント低下した。

また、子供のいる両親世帯(両親ともに生産年齢にあり、15歳未満の子供が一人以上いる結婚世帯と非婚生活共同体の双方を含む)の就業状況をみると、約半数が共稼ぎで、稼ぎ手が父親のみは35%、双方ともに無就業が9%、母親のみ就業が5%だった(図1)。なお、「無就業」には、両親育児休暇などで就労していない場合が含まれる。

図1
出所:ミクロ人口調査-家族・生活形態別人口、 連邦統計局

統計は、「移民のバックグラウンド」という用語を頻繁に使っている。例えば、移民のバックグラウンドを持つ親子世帯とは、少なくとも片親が外国籍を持つ親子共同体、あるいは帰化対策によりドイツ国籍を取得した親子共同体を指す。これが全親子世帯の27%に及んだ。このうち結婚世帯は82%を占めたが、移民バックグラウンドのない親子世帯では71%に過ぎなかった。逆に、子供のいる生活共同体や一人親世帯の割合をみると、移民バックグラウンドがある世帯(18%)に比べ、移民バックグラウンドのない世帯(29%)が高い。

移民のバックグラウンドの有無による家族形態の相違は、子供の数にも当てはまる。未成年の子供が三人以上いる全親子世帯のうち、移民のバックグラウンドのある世帯は16%で、移民のバックグラウンドのない世帯では9%に過ぎなかった。

3歳未満児の保育率は上昇、依然として顕著な東西格差

2007年3月時点の保育供給率(保育施設を活用する児童の割合)をみると、3歳未満児については17%、3歳~5歳児については89%と、各々前年比で2ポイント上昇した。保育サービスを活用した親は、3歳未満児では約32万人、3~5歳児では約200万人に及んだ。保育供給率には顕著な東西格差(ベルリンを除く)があり、3歳未満児では西部(10%)、東部(41%)、3~5歳児については、西部(88%)、東部(94%)であった。旧東ドイツ地域では、社会主義時代の名残で保育施設が充実していることを反映した結果だ(図2)。

図2

*)各々ベルリンを除く
出所:ミクロ人口調査-家族・生活形態別人口、連邦統計局

保育施設を増設、出生率向上が課題

ドイツでは、子育ては基本的に家庭で行うべきものという根強い社会規範があり、出産・育児休暇の充実、保育サービスの立ち遅れが施策の特徴としてあらわれていた(特に旧西ドイツ地域)。しかし、メルケル首相率いる連立政権は、同国の出生率が欧州諸国のなかで最低水準であることから、その改善を喫緊の課題に位置付け、仕事と育児の両立支援の拡充に注力してきた。フォン・デア・ライエン家族相は、自らも子供7人を持つワーキングマザーで、就任以降、両立支援策を急ピッチで具体化している。既に両親手当の導入(注2)や共働き世帯の育児費用控除を実現したほか、保育施設についても2013年までに3歳未満の児童75万人分の保育施設(保育ママを含む)を増設する方針も閣議決定した。さらに、今年10月には児童手当も増額される予定だ。フォン・デア・ライエン家族相は、今回の数値から、現行政策の意義を再確認している。

資料出所

  • 連邦統計局発表資料(2008年7月22日)
  • 連邦政府発表資料(2008年7月22日)

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