中欧・東欧8カ国に労働市場を開放
―予定早め、今年7月から

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2008年6月

サルコジ大統領は5月28日、訪問先のワルシャワで、中欧・東欧8カ国を対象に労働市場を7月1日から完全に開放する方針を発表した。対象となるのは、欧州連合(EU)の第1次東方拡大(2004年5月1日)で新たに加盟したポーランド、チェコ共和国、スロバキア、スロヴェニア、ラトヴィア、リトアニア、エストニア、そしてハンガリーの8カ国(注1)。2007年に加盟したルーマニアとブルガリアは含まれない。

第1次東方拡大の際、所得格差を背景に新規加盟国から労働者が大量に流入することを危惧する声があがり、拡大以前のEU加盟国15カ国には、労働市場自由化までに5年の移行措置が認められた。国内市場への深刻な影響が懸念される場合は、移行期間をさらに2年延長することも認められており、2011年が最終期限となっている。

フランスは、国内の労働市場の保護を理由に、新規加盟国からの労働者受け入れに関して5年の移行期間を設けていた(注2)。具体的には、2004年5月1日から2年間は、自営業者を除いて従来通りの規制を適用し、移行措置に関する評価や、雇用環境、その後の見通しなどを全国規模で調査、06年5月1日には新規加盟国を対象に労働市場を部分的に開放、09年4月30日までを実験期間としていた。

サルコジ大統領はこの日、予定より1年前倒しで自由化に踏み切ることを強調し、「ヨーロッパのために貢献すると明言したからには、こうした(EUの)考えに沿った政策決定をしないわけにはいかない」と述べた。フランスでは、2005年5月、EU拡大による安価な労働力の大量流入や産業の空洞化が国内の雇用に及ぼす影響への懸念を背景に、国民がEU憲法に「ノー」を突きつけたという経緯がある。にもかかわらず、今回の決定を下したのは、EU議長国就任を7月に控え、今後の円滑なEU運営を意識したためだとみられている。

EU欧州委員会はフランスの決定を歓迎すると同時に旧EU加盟国に対し、完全自由化の最終期限である2011年までに移民労働者の入国制限を撤廃するよう求めた。フランスの決定後に、上記8カ国の出身者に対する入国制限を継続するのは、オーストリア、ベルギー、デンマーク、そしてドイツの4カ国のみとなる。

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