3月の失業率5.1%に上昇
―失業保険給付拡充の議論浮上

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2008年5月

労働統計局は4月4日、2008年3月期の失業率を5.1%と発表、前月の4.8%から0.3%の上昇となった。非農業部門で8万人の雇用機会が喪失し、ハリケーン・カトリーナの被害によって卸売業を中心に雇用減となった2005年9月以来の高い失業率となった。住宅市場の低迷などによる建設業での5万1000人の減少、自動車販売の低調などによる製造業での4万8000人の減少が目立つ。金融不安や消費の低迷が影響し、サービス部門でも金融で5000人の減、小売業で1万2400人の減となった(注1)。

長期化する失業

失業の長期化も指摘されている。National Employment Law Projectの報告書によると、2001年3月の時点(直近の景気低迷の開始時点)で平均失業期間が12.8週であったのに対して、2008年1月の平均失業期間は17.5週になっている。また、6カ月以上失業状態にある労働者数は、1990年の景気低迷開始時で68万8000人、2001年の景気低迷開始時で69万6000人であったのに対して、2008年1月時は約140万人と倍増していると指摘する(注2)。

経済刺激策の模索

失業が問題化する中、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)は2月に決定された景気刺激策に加えて1500億ドル規模の対策を実施する必要性を訴えている。ペロシ議長は住宅所有者への支援策や減税策を訴えている。

ロイ・ブラント下院議員(共和党・ミズーリ州選出)らは減税策を提案している。また、オリンピア・スノウ上院議員(共和党)は、選出のメイン州の失業率が高い状態にあることを懸念し、失業手当の追加を提案している。実際、下院では失業保険期間の延長を議論する動きがある。

失業保険給付期間延長の動き

アメリカの失業保険給付は州ごとに行われる。給付期間は各州で様々だが、継続期間に応じて13週から最長26週とする州が多い(表1参照)。

表1:米国州別失業保険の類型
  給付期間(週) 週給付額(ドル)
最低額 最高額
アラバマ州  15-26 45 235
アラスカ州  16-26 44-68 248-320
アリゾナ州  12-26 60 240
アーカンソー州  9-26 73 409
カリフォルニア州  14-26 40 450
コロラド州  13-26 25 413-455
コネチカット州  26 15-30 501-576
デラウェア州  24-26 20 330
ワシントンDC 19-26 580 359
フロリダ州  9-26 32 275
ジョージア州  6-26 44 320
ハワイ州  26 5 523
アイダホ州  10-26 58 364
イリノイ州  26 51-70 369-511
インディアナ州  8-26 50 390
アイオワ州  9-26 51-62 347-426
カンザス州  10-26 101 407
ケンタッキー州  15-26 39 415
ルイジアナ州  21-26 10 258
メイン州  14-26 57-85 331-496
メリーランド州  26 25-65 380
マサチューセッツ州  10-30 32-48 600-900
ミシガン州  14-26 113-143 362
ミネソタ州  10-26 38
ミシシッピ州  13-26 30 210
ミズーリ州  8-26 45 320
モンタナ州  8-28 114 386
ネブラスカ州  14-26 30 298
ネバダ州  12-26 16 362
ニューハンプシャー州  26 32 427
ニュージャージー州  1-26 85-97 560
ニューメキシコ州  -26 66-99 355-455
ニューヨーク州  26 40 405
ノースカロライナ州  13-26 39 457
ノースダコタ州  12-26 43 385
オハイオ州  20-26 103 365-493
オクラホマ州  18-26 16 392
オレゴン州  3-26 108 463
ペンシルバニア州  16又は26 35-43 539-547
ロードアイランド州  8-26 68-118 513-641
サウスカロライナ州  15-26 20 326
サウスダコタ州  15-26 28 285
テネシー州  13-26 30 275
テキサス州  10-26 57 378
ユタ州  10-26 26 427
バーモント州  26 61 409
バージニア州  12-26 54 363
ワシントン州  1-26 122 515
ウェストバージニア州  26 24 408
ウィスコンシン州  12-26 53 355
ワイオミング州  11-26 28 387

出所:労働省ホームページ, EMPLOYMENT AND TRAINING ADMINISTRATION, Office of Workforce Security(SIGNIFICANT PROVISIONS OF STATE UNEMPLOYMENT INSURANCE LAWSJANUARY 2008 (PDF:83.62KB)新しいウィンドウ)より作成

2008年1月にはジム・マクデルモット下院議員(民主党・ワシントン州選出)やエドワード・ケネディ上院議員(民主党・マサチューセッツ州選出)が失業保険給付額の引き上げや給付期間の延長にかかわる法案を提案している。マクデルモット下院議員の案では給付期間延長とともに現行の給付額に50ドル追加する案を盛り込んでいる。ケネディ上院議員の案では給付期間の33週までの一時的延長が盛り込まれている。ブッシュ大統領やグティエレス米商務長官らは、過去30年間で比較すれば5.1%という水準は平均よりも低い値であるとして給付拡大の動きに対して反対の意向を示している。

しかし、このような政府の見解に対して、プリンストン大学のアラン・クルーガー教授は、人口年齢構成が高齢化しているため、30年のスパンで比較することは誤解を生じると指摘する。労働力人口が総人口に占める割合が1990年の64%から62%に減少していることだけを見ても、失業率の上昇はかつてよりも深刻なことを意味するというのである。

前回の景気後退局面に際し、下院では2002年に失業保険給付の13週延長を可決した。しかし、これは景気低迷の開始から時間がかなり経過してからの遅い決断であった。1990年には13週の延長が決定され合計で26週となり、いくつかの州では33週までの追加的な給付が決定されている。

ただ、政府が失業保険給付期間の延長には慎重な姿勢を見せていることにも理由がある。そのような決定は、景気の後退を正式に認めることを意味するからである。

州別の失業率

州別ではミシガン州が7.2%で最高の水準にある。ただ、ミシガン州内のデトロイト、ウォーレン、リボニア地域に着目すれば、7.7%とさらに高い水準にある。

この他、6%以上の高い値を示している州は、アラスカ、カリフォルニア、ワシントンDC、ミシシッピ、ロードランドである。逆に、低い水準にある州は、サウスダコタ(2.5%)、ネブラスカ(2.9%)、サウスダコタ(3.1%)、オクラホマ(3.1%)、ワイオミング(3.1%)である。

前年同月と比較して最も大きく悪化した州は、カリフォルニア、フロリダ、ネバダで、ともに1.2%上昇している。一方、改善しているのがオクラホマ(1.2%低下)、ノースダコタ(0.5%低下)など5つの州である(表2参照)(注3)。

表2:州別失業率(前年同月比)
  2007年3月 2008年3月 前年度比変化
アラスカ州  6.0 6.7 0.7
アーカンソー州  5.3 4.9 -0.4
カリフォルニア州  5.0 6.2 1.2
ワシントンDC 5.7 6.2 0.5
フロリダ州  3.7 4.9 1.2
ジョージア州  4.2 5.3 1.1
アイダホ州  2.8 3.0 0.2
アイオワ州  3.7 3.5 -0.2
ミシガン州  7.0 7.2 0.2
 デトロイトなど 7.4 7.7 0.3
ミシシッピ州  6.4 6.0 -0.4
ミズーリ州  4.7 5.7 1.0
ネブラスカ州  2.7 2.9 0.2
ネバダ州  4.6 5.8 1.2
ノースダコタ州  3.2 3.1 -0.1
オハイオ州  5.5 5.7 0.2
クリーバランドなど 5.7 6.0 0.3
オクラホマ州  4.3 3.1 -1.2
ロードアイランド州  4.9 6.1 1.2
サウスダコタ州  3.0 2.5 -0.5
テネシー州  4.5 5.6 1.1
テキサス州  4.4 4.3 -0.1
ワイオミング州  3.0 3.1 0.1

出所:労働統計局資料リンク先を新しいウィンドウでひらくより作成

カリフォルニア州

カリフォルニア州雇用発展局(Employment Development Department)による4月18日の発表では、カリフォルニア州の3月期の失業率は6.2%で、2月期の5.7%から悪化した。前年同月の5.0%から急速に悪化している。

カリフォルニア州の産業別の雇用失業動向に目を向ければ、建設および金融の雇用労働者数がそれぞれ9.6%、4.7%減少していることがわかる(注4)。シュワルツネッガー州知事は住宅建設と金融業での雇用は減ってきているものの、カルフォルニア州経済にとっての主要な産業では依然として雇用は増加していると指摘している。

参考

  • Los Angeles Times, April 5, 2008, A1, A18
  • Los Angeles Times, April 19, 2008, C1, C3
  • New York Times, April 5, A1, A15
  • Daily Labor Report, April 9, 2008, The Bureau of National Affairs

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