2008年労働争議の状況 
―件数は横ばい、産別交渉のため交渉が長期化

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2008年11月

労働部がこのほど発表した2008年(8月末まで)の労働争議の状況によると、件数は全体で80件と前年同期間の81件をわずかに下回った。争議を実施した労働組合は、ナショナルセンター系列でみると、全体の95%にあたる76件が民主労総(KCTU)、残り4件が韓国労総(FKTU)関係となっている。業種別では、製造業(自動車、同部品、機械、化学、電機など)が最も多く、53件と全体の66%を占める。特に、KCTU系の産別組織である金属労組関係の労働争議が増加しており、44件と全体の55%を占めている。なお、同割合は2006年34.1%、2007年29.6%だった。また、外資系企業で発生した17件の労働争議のすべてがKCTU絡みであった。そのうち13件(76.5%)は金属労組関係である。

労働争議に伴うスト日数は平均31日。近年の推移では、2003年29日、2004年24.7日、2005年48.6日、2006年54.4日、2007年33.6日となっている。

また、労働損失日数は66万日と、前年の36.4万日の55.2%増となった。近年の推移では、2003年108.7万日、2004年101万日、2005年 43.4万日、2006年 104.1万日、2007年36.4万日、2008年66万日となっている。平均スト日数が短くなったにもかかわらず労働損失日数が増加した主な要因としては、金属労組との産別交渉の増加によるスト参加人員の増加が考えられる。特に、金属労組関係の四大自動車メーカーの産別紛争が2007年2.2万日から2008年に16.5万日と7倍以上となったことが影響している。

労働部の情報では、産別交渉の開始により、企業現場での交渉は紛争終結までの期間が長期化しているという。2008年の交渉期間は平均132日かかり、終結までに平均16回の労使交渉を行っている。

労働争議の多くは、賃上げや組合活動(組合専従や組合事務所の提供など)、雇用の安定(リストラや退職年齢の引き上げなど)などのような問題に関する労使交渉の中で発生している。争議が長期化している企業現場の状況は似通っており、上部団体からの介入のほか、解雇者の復職や違法スト参加者への民事及び刑事責任の免除が組合からの争議終結の必要条件として提示されているとみられる。また、最近は非正規社員の正規化問題なども紛争解決を長期化させている大きな要因となっている。2008年に産別交渉を行った金属労組の地域労組及び支部労組はすべてストに至っており、中には、中央、地域及び支部レベルのすべてでストを打たれた企業もあったという。また、組合専従問題(注1)が、新たに組織化された金属労組系の企業現場でしばしば発生している。こうしたケースでは、組合員数や企業の状況を考慮しない、多すぎる専従職員の設定を組合が要求しているようだ。専従問題は、団体交渉の重要な議題の一つとなり、また他の要求を勝ち取るための梃子としても使われているとみられる。

労働部は従来、こうした労使紛争に対し、労使が「対話」と「妥協」により諸問題を解決できるような労使関係の環境整備を図っていくことを基本方針としている。こうした努力の結果、近年の労使関係は安定的に推移しており、労使紛争件数及び違法スト件数とも減少傾向にあるとの認識である。2008年の労働争議の状況については、労働争議件数が前年比ほとんど差がなかった点を評価しつつも、金属労組関係の紛争の増加が懸念材料となっていることを挙げている。産別組織である金属労組が介入する労働争議が増えた結果、交渉が長期化したとの見方である。

組合側は、組織率の低下による「闘争力」の低下を克服するために、共同で闘える「産別」への転換を進めてきたが、こうした産別転換による交渉の長期化は当初より懸念されたものである。労働部も2008年の状況について、産別交渉の導入により労働争議の長期化懸念が現実となった点を強調している。

出所

  • 韓国労働部Web

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