中華全国総工会が『企業労働組合議長決定方法』を発表

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  • 国別労働トピック:2008年11月

中華全国総工会は7月、企業の労働組合議長の決定方法を規定する『企業労働組合議長決定方法』発表した。これにより、企業の総責任者、共同経営者及びその近親者、人事部門の責任者、外国籍従業員などは企業の労働組合議長の候補者から除外されることになる。全国中華総工会がこうした規定を打ち出した背景には、これまで労働組合の議長ポストに、企業の「二番手ボス」や経営者の妻、人事の責任者等が就く慣習があり、組合員とのトラブルに発展するケースがあったためと見られる。

『方法』は合わせて6章、26条の規定から構成され、まずその総則で「党が幹部を管理し、法に基づき規範的であり、民主的であり、秩序正しく組織するという原則を堅持しなければならない」との基本原則が示された。また議長の資質については、「政治的な立場がしっかりしており、労働組合の業務を熱愛していること」など4つの条件をあげている。このほか『方法』は、企業の労働組合議長の民主的な選挙・管理・待遇等についても規定している。たとえば、組合業務の継続性を確保するため、「企業の労働組合議長に空席が生じた場合、3カ月以内に補欠選挙を実施しなければならない」と規定。また議長の待遇については「企業の労働組合議長は通常、企業管理職相応の待遇を受ける」とし、さらに「上位レベルの労働組合の推薦を受け、民主的な選挙により企業の労働組合議長が選ばれた場合、その賃金待遇・社会保険費用等は、企業及び上位レベルの労働組合が分担してもよい」としている。現在『方法』は試行段階であるが、実施されれば中国国内すべての企業に適用される。条文以下のとおり。

『企業労働組合議長決定方法』(試行)(2008年7月25日)

第1章 総則

第1条
企業労働組合の議長決定のメカニズムを健全に整え、労働組合議長の役割を十分に発揮させ、業務、職責を確実に履行させ、労働組合組織の凝集力を強化することを目的とし、『労働組合法』、『中国労働組合定款』、『企業労働組合業務条例』に基づき、本方法を制定する。
第2条
企業労働組合の議長決定のメカニズムを健全に整え、労働組合議長の役割を十分に発揮させ、業務、職責を確実に履行させ、労働組合組織の凝集力を強化することを目的とし、『労働組合法』、『中国労働組合定款』、『企業労働組合業務条例』に基づき、本方法を制定する。
第3条
企業の労働組合議長の決定に当たっては、「党が幹部を管理し、法に基づき規範的に、民主的に集中させ、秩序正しく組織すること」との原則を堅持しなければならない。
第4条
1つ上のレベルの労働組合が企業労働組合議長の決定を直接に指導する。

第2章 就任の条件

第5条
企業の労働組合議長は以下の条件を具備していなければならない。
  1. 政治的な立場がしっかりしており、労働組合の業務を熱愛していること。
  2. 職責の履行にふさわしい教育程度を具備し、法律法規、生産経営管理の知識を身につけていること。
  3. 民主的で、人々と密接な関係を保ち、組合員や従業員のために熱心に尽くすこと。
  4. 組織、調整能力に長じていること。
第6条
企業の総務責任者(副職を含む)、共同経営者及びその近親者、人事部門の責任者、外国籍従業員はその企業の労働組合議長の候補者となることはできない。

第3章 候補者の決定

第7条
企業の労働組合が改選時期を迎えた場合、又は新たに労働組合組織を構築する場合、1つ上のレベルの労働組合、企業の党組織ならびに組合員代表から成る指導グループを成立させて、労働組合議長候補者の指名と選挙を担当させる。
第8条
企業の労働組合議長の候補者は、労働組合分会又は労働組合小班を単位として協議のうえ推薦するか、全組合員が無記名投票の形で推薦し、労働組合執行委員会、1つ上のレベルの労働組合又は労働組合準備班が多数の組合員の意見に基づき候補者名簿を提示する。企業の労働組合議長の候補者は、当選者より多くなければならない。
第9条
企業の党組織と上のレベルの労働組合は、企業の労働組合議長候補者について調査し、就任条件に適合しない場合には調整を図る。
第10条
企業の労働組合議長の候補者については、公示を行わねばならない。公示期間は7日間とする。公示は、姓の筆画順に行なう。
第11条
企業の労働組合議長の候補者については、企業の党組織ならびに1つ上のレベルの労働組合に届け出て審査、許可を得なければならない。
第12条
上のレベルの労働組合は、労働組合に対してその企業以外の人員を労働組合議長の候補者として推薦することができる。

第4章 民主的選挙

第13条
企業の労働組合議長を決定するに当たっては、法に基づき民主的な選挙手続きを履行しなければならず、組合員による民主的な選挙を経て初めて議長の任に就くものとする。
第14条
企業の労働組合議長を選挙するに当たっては、組合員大会又は組合員代表大会を開催し、無記名投票の形で選挙を行わねばならない。
事情により会議に出席できない投票者は、他者に代理投票を委託することはできない。
第15条
企業の労働組合議長は組合員大会又は組合員代表大会で直接選挙で選出してもよいし、企業の労働組合執行委員会が選挙で選出してもよい。また、企業の労働組合委員と同時に選挙してもよいし、単独で選挙を行ってもよい。
第16条
組合員大会又は組合員代表大会で企業の労働組合議長を選挙する場合、選挙に参加する人数が大会に出席すべき人数の3分の2以上でなければ選挙は実施できない。
企業の労働組合議長の候補者が獲得した賛成票が大会に出席すべき有権者数の半数を超えてはじめて当選することができる。
第17条
いかなる組織ならびにいかなる個人も民主的な選挙業務を妨害してはならず、選挙権、被選挙権を有する組合員の出席を阻んではならず、私的な結託、他者の脅迫等の非組織的行為で選挙者にある人を選ばせたり選ばせなかったりしてはならない。いかなる方式でも選挙者の投票の意向を追及してはならない。
第18条
企業の労働組合議長に空席が生じた場合、3カ月以内に補欠選挙を実施しなければならない。補欠選挙までの間は、同じレベルの党組織と1つ上のレベルの労働組合の同意を得たうえで、一時的に1名の副議長又は委員が業務を主宰する。この期間は通常3カ月を超えてはならない。

第5章 管理と待遇

第19条
企業の労働組合議長は、選挙で選ばれた後、ただちに労働組合の法人資格登録又は労働組合法人代表変更登録を実施しなければならない。
企業の労働組合議長は通常、企業の副職レベルの管理職の条件で選択、配置され、相応の待遇を受ける。会社制の企業の労働組合議長は法に基づき取締役会に入らねばならない。
第20条
企業の労働組合議長については、同じレベルの党組織と上のレベルの労働組合が二重の指導を行なうが、同じレベルの党組織の指導が中心となる。党組織がまだ構築されていない企業においては、労働組合議長は1つ上のレベルの労働組合の指導を受ける。
第21条
従業員が200名以上の企業は、法に基づき専任の労働組合議長を配備しなければならない。同じレベルの党組織の責任者が労働組合議長を務める場合、専任の労働組合副議長を配備しなければならない
企業は法に基づき兼任の労働組合議長の勤務時間と相応の待遇を保障しなければならない。
第22条
企業の労働組合議長については、その任期が満了するまで、企業はその業務を随意に変動させてはならず、その労働契約を随意に解除してはならない。仕事の都合上変動が必要な場合には、そのレベルの労働組合委員会と1つ上のレベルの労働組合の同意を得なければならず、法に基づき民主的な手続きを履行しなければならない。
労働組合の専任の議長は就任の日から、労働契約期限が自動的に延長される。延長期間はその在任期間と同じとする。専任ではない議長は就任の日から、労働契約の残りの期間が任期より短い場合には労働契約の期限が自動的に任期満了まで延長される。ただし、任職期間中に個人に深刻な過失があった場合、または法定の退職年齢に達した場合は除く。
企業の労働組合議長を罷免、更迭する場合、組合員大会の全組合員又は組合員代表大会の全代表の無記名投票で過半数の賛成を得なければならない。
第23条
上のレベルの労働組合の推薦を受け、民主的な選挙により企業の労働組合議長が選ばれた場合、その賃金待遇、社会保険費用等は、企業が支払ってもよいし、上のレベルの労働組合又は上のレベルの労働組合と別の側が合理的にこれを分担してもよい。

第6章 付則

第24条
共同の基層の労働組合、基層の労働組合の連合会の議長を決める場合、本方法を参照とすることができる。
第25条
本方法は中華全国総工会が責任を持って解釈する。
第26条
本方法は公布の日から施行される。

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