EU域外からの移民労働者受け入れ職種案が公表

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2008年10月

移民政策に関する政府の諮問機関である移民提言委員会(Migration Advisory Committee)は9月、EU域外からの専門技術者(skilled worker)の受け入れを通常より容易にする人材不足職種の見直し案を公表した。現行の労働許可制度にかわり、11月に予定している専門技術者向けポイント制度の導入に合わせて、昨年12月から検討が進められていた。委員会の試算によれば、対象職種の数は増加したものの、就業者数ベースでは約3割減になるという。

医療・介護、建設、教育などの19グループ

現在、EU域外からの専門技術者等の受け入れに対して実施されている労働許可制度は、域内での人材調達が困難であることを示すよう雇用主に求めている(一定期間の求人広告の実績など)が、人材不足職種に関してはこれが免除される。今年はじめから段階的に導入されているポイント制(外国人を入国目的や専門技術等に選別して、年齢や学歴などに基づく入国資格を定める制度)の一環として、11月に運用が開始される専門技術者向け制度でも、この手法が継続される。その導入に先立ち、政府は人材不足職種の継続的な見直しを行う諮問機関として、移民提言委員会を昨年立ち上げた。同委員会は、(1)専門技術の水準(2)人材不足の有無(3)EU域外から人材を調達すべきか、という観点から、独自の調査研究に加えて企業や業界団体等から寄せられた意見なども踏まえ、初回の報告書を9月にとりまとめた。

報告書は、専門技術職種とみなす技能水準を全国資格枠組み(National Qualifications Framework)(注1)のレベル3と規定、また同職種の時間当たり賃金の中央値が10ポンド以上であることなどを前提に、実際に人材不足が生じている職種を絞りこんでいる。その際に、(1)国内の他地域からの人材調達の可能性はないか(2)国内労働者の雇用や専門技術の向上の阻害要件とならないか(3)廉価な労働力として移民労働者を使ってはいないか―なども考慮した。その結果、同委員会は▽特定の医療分野のコンサルタントおよび上級看護師▽土木技師、化学技術者などのエンジニア▽土地開発・建築にかかわる積算士及びプロジェクト管理者▽数学・科学の中等教育教員▽専門技術を有する調理師▽専門技術を有する上級介護労働者▽船舶・ホバークラフト乗組員▽獣外科医――など19の職種グループを人手不足の分野として挙げている。各々について、必要に応じてより詳細な職種を限定するとともに、経験年数や保有資格、時間当たり賃金額の下限などの条件を定める。なお、特に専門技術者が不足しているとみられるスコットランドについては、上記に加えて一定以上の技術・資格を有する高齢者向け看護師や食品等加工労働者なども人手不足職種として認めている。

一連の人手不足職種は、現行制度のもとで国境局(Border Agency)が定める不足職種と大きくは重なっている。標準職業分類に基づいて職業全般から選定しなおしたため、職種数は増加したものの、該当する職種がカバーする就業者数は100万人から70万人へと減少したとの試算を委員会は示している。また看護師など医療関係の一部の職種については、今後6か月間でさらに検討する予定だ。同時に、移民労働者の受け入れは短期的には必要な人材の調達を通じて企業やサービスの維持という利益をもたらすが、移民依存の傾向が強まれば、長期的には国内の人材育成を停滞させる懸念があるとして、バランスに配慮しながら制度を運用する必要を主張。最低でも2年に一回、同様の見直し作業を実施すべきであると政府に提言している。

委員会案をうけて、政府は10月には最終的な人手不足業種を固めたうえ、11月からの新制度に併せて運用を開始する予定だ。

参考資料

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