最低賃金を8.3%引き上げ、時間あたり3770ウォンに

カテゴリー:労働法・働くルール労使関係

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  • 国別労働トピック:2007年9月

韓国労働部は8月1日、2008年1月から同年12月まで適用される最低賃金を時間当たり最低賃金3770ウォンとすることを決定した。現行の3480ウォン(同)より290ウォン高い8.3%の引き上げとなる。

最低賃金は、最低賃金法に基づき、労働者の生計費、類似労働者の賃金及び労働生産性を考慮して定めるものとされている。適用対象は労働基準法が適用されるすべての事業又は事業場であるが、家族従業者、在宅労働者、精神又は身体の障害により労働能力が著しく低い者、試用期間中の者、職業訓練法による事業内職業訓練のうち養成訓練を受ける者などは適用免除とすることができる。

最低賃金の決定は、審議会方式がとられており、公労使それぞれ同数(9名)で構成される最低賃金審議会において審議される。同審議会で議決された最低賃金案は労働部長官に送られ、所定の手続き(注1)を経て最低賃金が決定される。

労働側の28.7%引き上げ要求に対し、「凍結」を主張した経営側

今回の審議においては、労働側の1000ウォンの引き上げ(28.7%増)要求に対し、経営側は凍結を主張した。10時間に及ぶ審議の結果、8.3%の引き上げが議決された。最低賃金審議会における議決は通常、表決により労使いずれかの提案が採決されるが、労使の要求が大きくかけ離れている場合は双方が妥協案を再提出するなどして調整が図られる。

労働側は従来、賃金格差や階層別所得格差の拡大に歯止めをかけるために、最低賃金を従業員5人以上企業の常用労働者の平均賃金(月額約187万ウォン)の50%水準にとの立場を鮮明にしており、今回も月額約94万ウォンに相当する時間あたり4480ウォンを要求した。

一方、経営側は最低賃金の引き上げが近年高い水準で行われていることから経営(特に中小・零細企業)に対する悪影響を挙げ凍結を主張した。代表的な経営団体である韓国経営者総協会(KEF)は、同協会などが実施した従業員規模300人未満の企業(対象320社)に対する調査結果を「凍結」の根拠としている。同調査では、77.4%の中小・零細企業が現行の最低賃金を高い水準とする認識であったこと、利益を確保できる水準の平均は現行の最低賃金(3480ウォン)より 6.2% 低い3264ウォンであること、35.2%の企業が最低賃金の引き上げに伴う人件費上昇から雇用削減を行う予定であること、などの回答であった。

経営側の最賃制度に対する改革要求

これら調査結果を踏まえ、KEFは次の点を公式に表明している。(1)最低賃金の算定は労働者の実質所得を反映した現実的なレベルで調整されるべきであること、(2)最低賃金の決定方式は、(現行の公労使の三者構成による審議会方式ではなく)政府が直接決定すべきであること、(3)監視又は断続的労働に従事する者の最低賃金は引き下げられるべきであること。

なお、経営側の一部には、引き上げが結果的に一桁台の引き上げに留まったことに安堵する向きもあったようだ。近年の傾向をみると、2000年以降の最低賃金の引き上げ率は平均10.6%と、同期間の平均賃金上昇率7.4%を上回っていることから今回も大幅な引き上げを懸念した経営者も少なくなかったとみられる。

年々高まる影響率

最低賃金の引き上げの影響を受ける労働者の割合(影響率)が年々上昇している。2002年9月の引き上げの影響率は6.4%であったが、今回の引き上げの影響率は13.8%に達する。こうした影響率の高まりから、最低賃金が本来目的の最低生計費の保障はもとより、韓国の大きな課題となっている所得格差や非正規労働者の労働条件の改善への有効な手段として、より積極的な役割を果たしているとみることができる。

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