第96回ILO総会
―ディーセント・ワークは持続可能な開発の中心

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2007年8月

スイス・ジュネーブで開催された第96回ILO総会(2007年5月30日~6月15日)は、持続可能な開発促進におけるディーセント・ワークの役割について討議を重ね、ソマビア事務局長の「ディーセント・ワークは持続可能な開発の中心にある」というメッセージをもって幕を閉じた。同事務局長は、環境に優しい持続可能な開発プロセスの達成を目指した地球規模の「グリーン・ジョブ・イニシアティブ」の検討を呼びかけ、貿易と雇用、労働市場分析及び世界的なディーセント・ワークの欠如に対する新たな取組みなど、様々な分野でILOの能力を強化することを主張した。この他に、漁業に関する新たな条約と勧告が採択された。

一般討議

持続可能な企業に関する一般討議では、持続可能な企業は、成長、富の形成、雇用、ディーセント・ワークの主たる源であり、これらを実現するには、持続可能な企業を導く環境――平和と政治的安定、良い統治と法の支配、社会対話、普遍的な人権と国際労働基準の尊重、起業家文化、健全な経済政策、公正な競争と金融利用機会、物理的・技術的インフラ、教育訓練、環境の持続可能性――が必要不可欠という結論が採択された。

企業レベルで重要な慣行として、社会的保護、社会対話と良好な労使関係、健全な人的資源開発慣行、労働条件、生産性、賃金と利益の共有、企業の社会的責任、企業統治などの項目が挙げられた。

国際労働基準

総会の基準適用委員会では、ミャンマーにおける1930年の強制労働条約(第29号)適用に関する特別会合が開かれた。委員会は、特に軍隊を中心に強制労働が依然として広がりを見せているミャンマーの状況に深い懸念を示し、未だ実行されていない審査委員会の勧告を全て実行するようミャンマー政府に求めた。その他25件の個別案件についての審議が行われた。

強制労働をテーマに本年の総合調査を実施した委員会は、依然として世界中の多くの国で新しいタイプのものも含めた強制労働に関する問題が存在し、多くの人々がその被害を被っているとしながらも、様々な国で進展がみられることに満足を示した。

漁業労働条約

過酷で危険な職業とされる漁業に従事する人々の状況改善を目的として、新たな漁業労働条約(第188号)が6月14日、賛成437票、反対2票、棄権22票で採択された。180のILO加盟国のうち10カ国(沿岸国8カ国を含む)の批准をもって発効する。付属する同名の勧告(第199号)も、賛成443票、反対0票、棄権19票で採択された。

世界の漁業労働者はおよそ3,000万人。今回の新たな基準には、漁業労働者の(1)海上における労働安全衛生及び医療の向上、並びに傷病者は陸上で治療を受けられること、(2)健康と安全のために必要な十分な休息、(3)労働契約の保護、(4)他の労働者と同じ社会保障上の保護――の確保に向けた規定が含まれている。また、長期間海上で過ごすことを考慮した漁船の建造・保守に関する規定も盛り込まれた。

ILOが2004年に発表した『漁業の労働条件に関する報告書』(注1)では、海の力、魚の捕獲・加工という業務の性質、海洋資源を探し捕獲するという予測不能な中で力尽きるまで連続的な作業が求められるという状況から、漁業を最も危険な職業のひとつとして位置付けている。最近では、一部の地域で海洋資源を求めより遠方まで出漁するようになっている。これは、かつては地元だけで消費されていた魚が、加工され世界中の消費者に出荷されるケースが増加していることが原因のひとつとされる。

こうした漁業の状況をふまえ、漁業従事者を保護し、漁業を魅力的で持続可能なものとするために、漁業を確実に労働法規の適用対象にすることの重要性が増していると同報告書は指摘している。

今回の条約及び勧告の採択を受けて、総会委員会の委員長は「この条約の不可欠な要素は、政府そして漁船所有者と漁業従事者の代表による協議の重要性である。そしてそれはこの規定のいたるところに反映されている」と評した。

今後は、加盟国が自国の批准に向けて当基準を議論することとなる。

参考

  • ILO Press release及びILO駐日事務所HP

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