金属産業、4.1%の賃上げで妥結

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

ドイツの記事一覧

  • 国別労働トピック:2007年6月

約340万人の労働者に影響を与えるドイツ金属産業の賃金交渉が3月半ばに開始され、パイロット地域に指定されている南西部のバーデン・ビュルテンベルク(BW)州地区で、5月4日に労使合意が成立した。妥結内容は、(1)07年4月・5月の2カ月分として400ユーロの一時金支給(2)07年6月1日から4.1%の賃上げ(12カ月間)(3)08年6月1日から1.7%の賃上げ(5カ月間)(4)08年6月から10月までの一時金として毎月賃金の0.7%を支給(5カ月間)――の4点が骨子。BW州地区の合意内容がパイロット協約となり、その他の地域の交渉でも、これに準じた合意が成立する見込みである。

好業績を背景に02年以来の高い賃上げ

ドイツの5つの代表的な経済研究所は4月19日、07年と08年のGDP成長率を2.4%とする共同経済予測を発表した。07年の予測は、06年秋に発表された数値から1%ポイント上昇した。

ドイツ金属産業労組(IGメタル)は、好景気を背景に、昨年の妥結水準の3%を大幅に上回る6.5%の賃上げを要求した。これに対し、金属産業経営者連盟(ゲザムトメタル)は3月27日、BW州地区の交渉で2.5%の賃上げと賃金の0.5%の一時金支給(12カ月間)を回答。IGメタルはこれを直ちに拒否した。労組側は、賃金協約期間終了後もストライキを実施できない平和維持義務期間が満了した4月28日以降、BW州で15万4000人、全国で40万人以上が参加する警告ストを実施した。

5月3日から4日にかけて行われたBW州地区の交渉は20時間にも及び、好調な生産状況に深刻な打撃を与えかねないストライキを回避するため、労使が最終的に歩み寄った。妥結内容は、07年4月・5月の2カ月分として、全ての労働者に400ユーロの一時金を支給、第1段階の07年6月1日から4.1%(12カ月間)、第2段階の08年6月1日から1.7%(5カ月間)の賃上げ実施である。さらに第2段階の5カ月間は賃金の0.7%の一時金が毎月支給される。

金属産業における4.1%の賃上げは、02年以来の高い水準である。労組側は19カ月の賃上げ合計が5.8%にのぼるとして、成果を強調した。他方、使用者側によれば19カ月間の追加費用は、年平均3.3%の賃上げに相当するという。賃金協約の期間は07年4月1日から08年10月31日までの19カ月間である。

企業レベルの柔軟性を容認

06年の賃金交渉は、3%の賃上げと310ユーロの一時金支給で妥結した。このうち一時金では、事業所委員会の合意を前提に、企業業績に応じて、0~620ユーロまでの増減幅を認める規定が初めて導入された。この規定は、企業レベルで産業別労働協約が定める労働条件からの逸脱を可能とする「開放条項」と呼ばれている。

今回合意された賃金協約にも、企業レベルで使用者と事業所委員会が合意した場合、第2段階の賃上げおよび一時金支給をそれぞれ最長4カ月間延期できる規定が盛り込まれた。これにより、08年6月からの1.7%の賃上げ実施を最長10月まで引き伸ばすことができる。また、賃金の0.7%の一時金は、6月から10月までの5カ月分でなく、10月の1カ月分しか支払われないこともある。使用者側が主張していたクリスマス手当(現在は月給の55%相当)を企業業績に応じて月給の40~70%の幅で可変的なものとする提案は、合意に至らなかった。

IGメタルのペータース委員長は、合意内容について、「労働者の利益を考慮した良い妥協である。労働者が成し遂げた好業績の下、組合員の懐に、1回限りの手当でない、真の成果配分をもたらすものである」と評価した。

ゲザムトメタルのカーネギーサー会長は、「この合意は、企業レベルにおける賃金の柔軟化の傾向を持続させた点でかろうじて容認できる。新しい開放条項は今回の交渉の重要な成果である」と強調した。

欧州中央銀行は、高すぎる賃上げがインフレを助長し、さらなる利上げにつながる危険性を指摘していた。経済専門家は、今回の金属産業の賃上げ水準は予想よりも低く、欧州中央銀行に焦慮の念を抱かせるほどではないと見ている。

賃金交渉とは別に、労使は、高齢化社会や高齢化する労働力、ME化された職場環境の変化、人口動態の変化に対応する人事政策の構想などの課題に関する議論を連邦レベルで開始し、08年6月までに結論を出すことで合意した。

ドイツ金属産業の賃金交渉実績
交渉年次 賃上げ要求 妥結実績 協約期間
2007年 6.5% ・一時金400ユーロ(2007年4月および5月分)
・2007年6月以降4.1%の賃上げ
・2008年6月以降1.7%の賃上げ(企業レベルの労使合意により、実施を最長4カ月延期可能)
・2008年から5カ月間、賃金の0.7%の一時金支給(企業レベルの合意により、実施を最長4カ月延期し、最低1カ月分まで削減可能)
2007年4月~
2008年10月
2006年 5% ・賃上げ3%
・一時金310ユーロ(企業レベルの労使合意を前提に、業績に応じて、0~610ユーロの幅で変動可能)
2006年3月~
2007年3月
2004年 4% ・2004年3月以降2.2%、2005年3月以降2.7%の賃上げ 2004年1月~
2006年2月
2002年 5~7% ・2002年6月以降4.0%、2003年6月以降3.1%の賃上げ
・一時金120ユーロ(2002年5月)
2002年3月~
2003年12月

参考レート

関連情報