自動車業界各社で相次ぐ雇用調整

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2007年3月

2007年2月5日、バジャドリッド県とパレンシア県にあるルノーの工場で、今後1年半にわたる一時的雇用調整手続きの適用が開始された。同工場では1月30日に、労組側と2007~2009年の労働協約を結んでいるが、その中で59歳以上の労働者を対象に希望退職を募ることも合意している。

今回の雇用調整の理由は、両工場における生産の低下。バジャドリッド工場はルノーModusを製造する世界で唯一の工場で、同モデルの販売が思わしくないことが最大の理由となっている。これまでに、(1)有期雇用労働者1000人の契約を更新しない、(2)フランスおよびトルコの工場で行われていたClio新モデルの生産を一部バジャドリッドに移転する――ことで対処してきたが、今後は新モデル製造の獲得に工場の存続をかけることになる。

自動車部品メーカーのRobert Boschは、マドリッド近郊アルカラの工場で燃料フィルターおよびインジェクションバルブを製造していたが、コスト削減のため同工場を2009年に閉鎖し、同じくマドリッド近郊のアランフェスにある自動車用プラスチック部品工場に移転することになった。アルカラ工場の労働者は、現在417人。このうち250人はアランフェス工場で雇用される可能性が高く、残り167人については早期退職の交渉が行われるとみられる。ちなみに同社はスペイン全国で8000人以上を雇用している。

2月22日には自動車部品企業として世界2位のDelphiが、スペイン南部カディス県のプエルト・レアルにある工場を、現在のストックが底をつき次第閉鎖する意向を突然発表した。工場閉鎖にともなう影響は、1675人の従業員だけでなく、間接雇用も含めると県内全体で4000人にのぼるとみられる。今回の工場閉鎖は欧州におけるDelphi再建プランの一環を成すもの。会社側は閉鎖の理由として、同工場の競争力の弱さ、過去5年にわたる営業損益をあげている。しかし、その背景には東欧への生産拠点の移動の意図があるのではないかとする声もある。

カディス県は、造船業再編の影響からいまだ完全に回復しておらず、スペインでも最も失業率の高い県。今回の工場閉鎖のニュースが地元社会に与えた衝撃は非常に大きく、労組では労働者に対し慎重な対応と、これまで通りの勤務を続けることを呼びかけているが、すでに23日には従業員の妻らによるデモ行進が行われ、24日にも工場付近で従業員と家族の抗議集会が行われた。

さらに、2005年から2006年にかけて従業員を1000人減らしてきたSEAT社でも、更なる雇用調整が実施される見通し。同社は2月22日に2006年の総括を発表したが、それによると2005年よりも損失を21%削減、販売台数を伸ばし収益も5%増えているものの、いまだに4900万ユーロの赤字を出している。雇用調整のほとんどは57歳以上の労働者の早期退職を中心としたものになる見通しである。

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