2006年の合計特殊出生率は、2.005
―出生率をさらに高めるためには、仕事と家庭の両立支援がカギ
2007年1月16日、INSEE(フランス国立統計経済研究所)が発表した統計によると2006年の合計特殊出生率(女性ひとりが一生に産む子どもの数)は2.005。INSEEは、ヨーロッパ諸国が少子化に悩むなか、フランスが「例外的」であることを強調しながらも、高齢化の進展にも言及。フランスは「欧州で一番の多産国であり、長寿国である」と述べた。政府は「仕事と家庭生活の両立支援」を軸に、さらなる出生率の上昇を目指す。
INSEEの報告によれば、フランスの2006年の合計特殊出生率は「2」を若干上回り(2.005)、ここ30年間での最高値となった。ドイツやイタリア、スペインなどの近隣諸国の出生率は1.4に至らず、さらに中東欧諸国(スロヴァキア、スロヴェニア、ポーランド、リトアニア、チェコなど)も1.3を下回っていることを紹介し、INSEEは「ヨーロッパの多くの国が深刻な少子化の危機に見舞われているなか、フランスがいかに『例外的』であるか」を強調している。
フランスでは、合計特殊出生率の上昇とともに、出生数の増加傾向も続いている。出産可能年齢にある女性の数が減少しているにもかかわらず、2006年の出生数は83万900人。前年に比べ2.9%増加し、ここ数年では出生数が多かった2000年(80万8200人)をも上回り、1981年来最高となった。
最近では、婚姻数の減少や晩婚化の進展、女性の平均出産年齢の上昇(注1)、パートーナーに同性・異性を問わないという概念の一般化がみられる。それにもかかわらず、フランスはアイルランドともに「欧州一の多産国」となった。その背景には、フランスの家族構造の変化とそれに伴う家族法の改正が存在する。
1970年には婚外子の割合はわずか6%であったが、今日では、生まれる子どもの二人にひとりは婚外子である。事実婚の慣習が広まり、それを追うように法整備が進められてきた。1972年には「非嫡出子」の権利は「嫡出子」と同等となり、2005年には嫡出・非嫡出という用語そのものが民法から削除された。婚姻関係から生まれた子どもと、そうでない子どもの区別は現在では存在しない。また、独身者でも養子を迎えることは可能である。
こうした家族の構造の変化に加え、充実した家族手当の存在もフランスを「多産国」に導いたともいえる。出産手当だけでなく養子手当など、「子どもを育てる」ことに対する経済的支援を充実させてきた。しかし政府は、さらに出生率を高めるためには、これまでの経済的支援に重点をおいた取組みでは限界があると判断。最近では、男性、女性ともに、「いかに仕事と家庭の両立を実現できるか」が出生率上昇のカギとなるとし、働き方の見直しに着手している(注2)。
政府が出生率を高めることを重視する背景には、高齢化の進展がある。欧州で一番の長寿国となったフランスでの、全人口に占める65歳以上の高齢者の割合は上昇が続き、2007年1月1日現在で16.2%に達した(1994年には15%)。INSEEの予測によればこの傾向はこれからも続き、2030年までに60歳以上の人の数は60%近く増加すると見込まれる。80歳以上の人では、今後25年間に75%も増加すると予想されている。
人口学上、自然増と自然減との境目となる出生率は2.08とされる。2.08前後を割ると、人口は減少に向かう。フランスは「欧州で一番の多産国」とはいえ、出生率はまだ2.08には届いていない。つまり、いまだ「少子化国」であることにかわりはないといえる(注3)。
注
- INSEEの報告書によれば、2006年の婚姻数は前年と比べて800組減少し、27万4400組。ここ10年で最低の数字となった。婚姻数は、2005年に若干増加したものの、21世紀に入ってからは基本的に減少傾向をみせている。初婚の平均年齢は、1994年には女性26.8歳、男性28.7歳であったが、2005年には女性29.1歳、男性31.1歳にまで上昇している。さらに、女性の平均出産年齢も、1986年には27.7歳だったが、2006年には29.8歳と上昇している。同時に、30歳以上の女性の出産数が増えている。2006年には新生児の52.8%が30歳以上の母親から生まれたが、この数字は1996年には44.3%に過ぎなかった。
- 2001年には父親になった男性のための「男性の出産休暇」を、2005年には育児休暇取得後の職場復帰促進を目的とした新たな育児休暇制度(第3子が生まれた場合、休暇を短くするかわりに手当を増加できるというパターンを追加)を導入するなど、働く男女の「仕事と家庭生活の両立」支援という視点にたった取組みがなされている。
- 先進諸国における出生率の動きには、二つの傾向がある。ひとつは、1960年代からの低下傾向が80年代に入りおおよそストップがかかり、その後は上昇傾向に転じるか、出生率1.3前後を境に上の水準を維持しているグループである。これらは「少子化国」とされ、スウェーデン等の北欧諸国、フランス、アメリカ、イギリスなどである。もうひとつは、80年代以降も一貫して出生率を下げ続けているグループであり、「超少子化国」とされる。ドイツ、イタリア、そして日本がこれにあたる。ちなみに日本の合計特殊出生率は、2005年に過去最低の1.26を記録。2007年2月の厚生労働省の速報によれば、2006年には1.30台に回復する見込み。
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