求職者給付制度の見直しを発表

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2007年3月

イギリスの社会保障制度は(1)全ての国民を対象とした社会保険制度としての「国民保険」(NIS)(2)租税を財源とする非拠出給付(児童手当など)や所得関連給付(3)税財源による「国民保険サービス」(NHS)――の3本で構成される。求職者給付は「国民保険」の一部として雇用年金省(DWP)が所掌している。2006年12月、ハットン雇用・年金相は、求職者給付制度について、働く能力があるにも関わらず就労していない長期失業者に対する給付条件の厳格化などの見直を発表した。

失業給付の引き締め政策は、サッチャー政権において失業者を減らすための政策の一環として実施された。その後、給付の名称が失業給付から求職者給付に変更されて以降も継続実施され、求職活動支援策と共に労働市場政策の柱となっている。

政府統計によれば、07年1月の求職者給付受給者数(claimant count)は約95万人。そのほとんどが短期の給付受給者(ここでは転職者を指す)。問題となっているのは就労期間よりも給付金で生活している期間が長い失業者。最新の統計によれば給付受給者全体の約12%が過去7年間のうち6年間を給付金に頼って生活している。

求職者給付を受給するためには、求職活動やジョブセンターでの定期的なカウンセリングなどの要件(第1表参照)を満たす必要があるが、約2%の受給者が求職活動を行なわないことを理由に一時的に給付金を停止されている。ハットン雇用・年金相によると「現在国内にある約60万人の求人の多くが、給付金受給者の多い地域で出ている。職がないと主張する長期の給付受給者の意見は根拠がない」と指摘した。更に「労働市場への復帰に向けてより積極的な行動を取るか、あるいは就職可能性を高めるためのプログラムに参加するかのいずれかをおこなわない場合には、給付金の一部または全部を削減するなどの措置を取るべき」として、長期失業者に対する給付要件の厳格化を示唆した。ただし厳格化に当たっては、再び職に就くことを希望している失業者に対する支援や訓練を強化する方法を検討する必要があるとも述べている。

イギリス人労働者が失業する背景として、大量の移民流入が影響しているとする見方もある。労働党が政権についた97年以降、就労者数が250万人増加したにも関わらず、同期間の福祉関連給付の受給者の減少数はわずか25万人に過ぎず、新たに創出された雇用の大部分には、各種給付受給者ではなく移民労働者が就いたとみられるためだ。この理由として「給付金受給者と求人とのマッチングの方法に問題がある」として、マッチングのあり方を見直す面で検討すべきと主張する議員もいる。

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