フォードでも新労働協約成立

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2007年12月

米国自動車産業の4年に1度の労働協約改訂の交渉は、GM、クライスラーに続きフォード社と全米自動車労組(UAW)の間で行なわれた。労使間の交渉は、11月3日、労組運営の退職者医療基金を創設、将来の生産計画や雇用保障などを盛り込んだ新協約で合意し、5日、労組幹部の会合で承認された。組合員投票では79%が賛成票を投じ(GMは66%、クライスラーは56%)14日に承認された(注1)。ちなみに、協約によるベネフィットは、5万4000人の現役従業員の他、9万4000人の退職者と2万8000人の退職者に先立たれた配偶者が対象となる。

『UAW FORD REPORT』(注2)や各種報道による協約内容とその背景は以下のとおりである。

将来生産・投資計画の明記

クライスラーの協約では将来の生産計画が明記されなかったため組合員からの強い反発を招いたが、フォードの新協約ではGMと同様に、工場別に将来の生産車種を示した計画が含まれるなど、雇用保障が盛り込まれている。たとえば、UAWフォードの加工工場を対象とした新技術・新設備投資を2億ドルと、ミシガン州ディアボーンにおいて工作機械及び金型部門を対象とする2000万ドルの投資を確約している。

また、経営側が閉鎖計画に加えていたミネソタ州ツインサイト組立工場とオハイオ州のクリーブランド鋳物工場及びバタヴィア変速機工場について、操業の延長を確約した。ただ、バタヴィアは2008年、ツインサイトは2009年、クリーブランドは2010年に閉鎖するとされており、前者の2工場に関しては、熟練労働者のための雇用機会を労使で模索することが明記されている。

加えて、協約期間中に1500人の労働者を雇い入れることを確約し、そのうえで更に1700人を雇い入れる可能性があることが示された。

退職者医療基金の創設

退職者医療基金の創設にあたっては、フォード側が現金65億ドルや転換社債33億ドルなど合計132億ドルを拠出する。また、基金が実際の医療費支給が開始される2010年まで、22億ドルの医療費を負担する(注3)。ただ、基金への現金の拠出額を他の2社と比べると、GMが約55%、クライスラーが50%に対して、フォードは約45%と低い(注4)。

賃金抑制と2階層賃金制度の導入

一時金の支払いと賃金抑制についてはGM、クライスラーとほぼ同様の水準である。2007年の一時金として3000ドル、2008年から2010年までの毎年、一時金として年間賃金の3%から4%が支払われる。一方、賃金については据え置きとなり、物価調整手当の加算にとどまる。

また新規雇用の労働者を対象として、従来に比べ約半額の賃金体系(2階層賃金制度)を導入する。GMやクライスラーと異なり非主要部門を対象に限定するという明記がない(注4)。その一方で、対象労働者の割合は全労働者の20%程度にすると見込んでおり、20%に達した場合に、従来の上層の賃金体系に移行することが可能となっている(注5)。

フォードの経営状態

フォードの2006年通年決算によると、純損益が127億ドルであり、市場占有率は最近4年間で18.9%から14.9%に落ち込むなど、3社の中では最も業績不振が深刻だとされている。同社は既に昨年9月にリストラ強化策の一環として、米国内の全工場従業員約7万5000人を対象に早期退職制度を発表し、今年9月までに2万7000人を削減しているが、今後、最大8000人から1万人の追加削減を検討中と報じられている。

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