労働争議が増加

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2007年10月

中国で労働争議が増加している。中国全国人民代表大会(全人代)法律委員会の楊景宇主任委員は、1995-2006年の12年間に労働争議案件が14.5倍に増加していることを明らかにした。同委員はこの増加傾向について「工業化や都市化、経済構造調整の進展、企業制度改革の加速、労使関係の多様化などで新たな状況・問題が発生している」と指摘した上、「一部地域、業種、企業では非常に深刻な状況であり、労使関係にマイナスの影響を与えている」と述べている。この結果、(1)労働契約率が低く、問題発生時に労働者の合法権益が保護されない(2)労働契約期間の短期化が進み、労使関係が不安定になっている(3)雇用者側が労使関係で優位な立場を利用し、労働者の合法権益を侵犯する-などの問題が目立ってきていると言う。

こうした状況下、四川省成都市の企業で労働者3000人がストに突入、警官隊と衝突する事件があった。そのあおりで深セン証券取引所に上場する親会社も売買停止に追い込まれたという。騒ぎが起きたのはエンジンメーカーの成都雲内動力。中国人権民主化運動情報センター(本部香港)によると、リストラ補償金の削減に怒った労働者3000人が8月23日会社事務所に押しかけ、設備を壊すなどした末警官隊と激しく衝突した。また労働者の一部は成都市庁舎前で激しい抗議活動を展開したという。親会社の昆明雲内動力(雲南省)は30日、「成都雲内で労働争議が起き、同社は生産停止状態にある」と認める声明を出した。

労働争議の多発に伴い、裁判所に持ち込まれる争議案件も増えている。8月28日付の現地紙労働報によると、上海市楊浦区当局は近く、裁判所に持ち込まれた労働争議の調停を区工会に委託する新システムを試験導入する考えであることを明らかにした。提訴数が増えている上、内容の「専門性」に裁判官が対応できないためだという。既に「労働者権利保護傑出弁護士」と呼ばれる10人が「特別招聘調停員」に専任された。司法の正統性を自ら放棄するような動きだが、同区人民法院(裁判所)の顧偉強院長は「労働争議を工会と調停員に委ねれば、社会が持つ力を解決に利用できる。また、労働者に帰属意識を持たせることができ、企業側にも法廷闘争に伴う感情のこじれを減らせる」とメリットを語っているという。楊浦区は工業団地としての歴史が古く、このところ労働争議が多発しており、同区人民法院は2006年7月からの1年間に631件の労働争議を受け付けた。うち、7割近い426件が賃金をめぐるトラブルで、業種では建設業が全体の46%を占めている。

資料出所

  • 時事ワールド

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