不法移民の違法雇用に禁固3年を求刑
2006年11月29日、マドリッド州で、不法移民労働者を違法に雇用し、劣悪な条件で働かせていた雇用主に対し、検察側は禁固3年を求刑した(注1)。この雇用主は建設部門の自営業者で、2002年11月にスペインに不法に滞在している外国人を建設労働者として、書面による雇用契約を交わさずに採用した。
その後、この外国人は同じ雇用者のもとで2005年3月3日まで継続的に働いたが、不法移民であるため、この間、社会保障制度の加入などは一切認められないどころか、労働時間は1日10時間を超え、賃金は働いた日数分だけで、祝日・週末等は支払われず、有給休暇や賞与もなかった。
こうしたなか、2005年2月に病気のため入院した当該外国人に対し、雇用主はその間の賃金は支払わない旨を通告。本人が抗議すると、同年3月3日、この雇用主は一方的に解雇した。外国人は、これを不当解雇としてマドリッド地方裁判所労働法廷に訴え、同年7月に不当解雇の事実が認められた。この外国人は、刑事法廷にも雇用者を訴えており、検察側は「労働者の権利に対する罪」で禁固3年を求刑した。
検察側は、このほかにも「賃金12日分×12カ月」を罰金として、さらに6000ユーロを精神的損害に対する賠償として支払うことを求めている。裁判所がこれを認めれば、執行猶予が認められる禁固2年を超えているため、実刑判決となる。不法で入国する外国人があとを立たないスペインでは、不法移民と分かっていながら「安い労働力」として利用する雇用主の存在が問題となっている。こうしたなかで、裁判所がどのように判断するか注目されている。
注
- マドリッド州では労働訴訟担当の検察官が、労災や労働関係上の違法行為の追及を厳しくする意向を示しており、今回の求刑もそれに沿うものとされる。マドリッド検察局は、労働安全衛生や社会保障制度に関する違法行為の追及を目的として、マドリッド市役所と協定を結んでいる。協定の内容は、(1)労災の際に救急隊から市警察にすぐに連絡し、現場撮影を行うよう要請する、(2)労災予防措置が遵守されていない場合も現場で証拠を集めるよう連絡する――といったもので、検察と市役所がこうした協定を結ぶのはスペイン初のケースとして注目されている。
参考レート
- 1ユーロ (EUR) =154.93円(※みずほ銀行ウェブサイト2007年1月9日現在)
2007年1月 スペインの記事一覧
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関連情報
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