年功年金受給の増加と今後の年金水準の見通し

カテゴリー:高齢者雇用勤労者生活・意識

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  • 国別労働トピック:2007年1月

政府と労働組合との会合が年明けにも開始される予定であるが、その交渉議題の中でもっとも喫緊の課題となりそうなのが、年金受給額算定の際に用いられる転換指数(注1)の見直しである。財政分析会社のConsultiqueがEphesoとともに行った分析によると、この見直しの影響は、年金算定基準の修正次第であるという。Consultiqueのシミュレーションは、社会保障費の評価に関してNucleo(労働社会保障省の諮問機関)が提示した指数を採用している。チェーザレ・アルメッリーニConsultique社長は、「新指数の効果は、混合方式(拠出方式と報酬方式の混合方式)の適用される労働者が年金生活に入る2013年から現れる。この効果は、労働年数の短い者ほど厳しくなり、拠出方式のみが適用される1995年後に労働を開始した者にとって最も過酷になるだろう」と述べている。

Consultiqueの示した12の例についてみると、年齢および労働形態(自営業者か被用者か)によって、年金受給額が異なることがわかる。なお、この12例のすべてが、40年の保険料を納付して、65歳で年金受給生活に入ることを想定している。まず、30歳の被用者で保険料納付期間が5年間ある者について新転換指数を適用した場合、年金の最終所得代替率は、現在の75.5%から63.7%に低下する。これが自営業者の場合、47.3%から39.8%である。自営業者の場合、保険料納付期間が同じであれば、被用者より減額幅が小さいが、賦課される保険料率が低いために、所得代替率も著しく低くなり、被用者に比べて平均で20%も低下する。

減額幅は、保険料納付期間が長くなるほど小さくなる。具体的には、50歳で保険料を25年間納付した被用者の場合には、年金受給額の下げ幅は、78.6%から74%と4.6%にとどまる。同じ年齢の自営業者の場合、59.2%から56.3%と、2.9%の低下である。

一方で、年金制度改革の実施に対する政府の意図が不確かなことがあって、年金の早期受給を選択する労働者の数が増えている。事実、2006年1月から9月までの9ヵ月間に、前年同時期に比べて10.5%増(182,952件増)の年功年金受給申請がINPS(全国社会保障機関)になされた。

INPSのデータによれば、2006年1月から9月までの老齢年金の受給申請件数も、前年同時期比で12.5%(24万7574件)増加している。この間の年金受給申請件数は、全体でみても、前年同時期比6.5%増(71万7846件増)である。申請件数は、今後さらに増えるおそれもある。INPSの試算では、2006年全体で、年功年金の支給は220000万件と、前年に比べて約40%もの大幅増加の可能性が指摘されている。

出所

  • Corriere della Sera(2006年11月6日付)

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