中間選挙の結果と労働分野への影響

カテゴリー:雇用・失業問題勤労者生活・意識

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  • 国別労働トピック:2007年1月

11月7日、米国では大統領中間選挙が実施され、現政権であるブッシュ共和党が大敗した。この結果、民主党が12年ぶりに議会の上下両院を制することとなり、今後の政策方針と政策実施の行方について国民の関心が高まっている。

経済情勢の好転でも、増えつづける労働者の負担

米国経済の雇用情勢は、過去3年間で460万人以上の雇用増を生み出している。政府統計局の発表によると2006年11月時点での雇用者数1億4500万人、失業率4.5%で、昨年同期と比較して堅調に推移している。

米国政府は、こういった積極的な経済活性化政策の一方で、ハリケーン被災地への緊急対策や「賦課方式」の縮小、「個人退職勘定(PRA)」導入という公的年金の改革の推進(注1)などを進める方針で、労働者の福祉・福利に関する問題が課題として注目を集めている。また、こういった福祉・福利政策は民主党との方針対立の焦点ともなっている。

民主党の支持基盤とも言える労働組合関係では、雇用形態の多様化、労働の質の変化による組合組織率の低下、AFL-CIOの分裂や新たな社会運動の動き(注2)などが今後の動向として注目される。変容する労働運動の背景となっている労働者を取り巻く環境や条件の変化、特に、最低賃金の適用範囲の変更や福利厚生費の見直しなど賃金制度の変更の問題、健康保険の企業負担分をめぐる労使の葛藤などは労働者生活の密接に関わる問題として今後の動きが注目される。(注3)

中間選挙結果をめぐる労働者代表たちの反応

労働者生活に負担感が増す政策方針を打ち出してきた現政権への評価が今回の中間選挙の結果であるとする見方がある。(注4)

全米自動車労組(UAW)のロン・ゲッテンフィンガー会長は、今回の結果をうけ、「UAWが支持する民主党の候補者たちが、賃金、適切な医療保険、年金を確保し、貿易政策や海外への事業拠点移転政策の失敗からの一日も早い回復に務めることに期待する」と発言し、、今回の選挙結果は「勤労者とその家族」にとっての勝利だと発言した。(注5)

また、国際機械工労組(IAM)のトマス・ブッヘンバーガー会長も、勝利を収めたことを宣言し、今後は賃金の向上、公共料金の引き下げ、教育費や医療費の問題に民主党が積極的に取り組むことに期待する旨の発表を行っている。(注6)

さらに、労働組合ナショナルセンターである米労働総同盟産別会議(AFL-CIO)のジョン・スウィニー会長は、「今回の選挙は、米国にとって大きな方向転換を促すものであり、結果は勤労者家族にとっての大きな勝利である。また、ブッシュ政権はイラク戦争を会しし、医療問題を無視し、最低賃金の引き上げも拒否、公的社会保障制度の切り下げ、海外に仕事が流出することをむしろ促進するなど、働くアメリカ人のニーズにこたえることが無かった。これに対して、民主党のあらたな国会の指導者たちは、早急に優先課題に取り組み、医療問題の解決、退職保障プランの実現や貿易政策、移民政策に的確に取り組むことを期待する。」とメディアを通じて発表している。(注7)

これについてブッシュ大統領は、米国議会のトップとして党派を超えた協力関係を構築し、「21世紀の国際的挑戦」のスローガンのもと、国内で抱える問題やイラク問題を初めとする国際関係への取組みを積極的に行っていく考えを示している。(注8)

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