新しい社会保険、年金政策の展開

カテゴリー:勤労者生活・意識

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  • 国別労働トピック:2006年9月

労働保険で適格年齢引上げと対象拡大を計画

台湾の与党、民主進歩党(民進党)が率いる内閣は、4月26日、労働保険法の適格年齢制限を65歳に引上げ、強制加入対象を従業員4人未満の企業の労働者に拡大する、一連の改正案を承認した。

蘇貞昌行政院長(首相)は、「行政院の毎週行われる閣議の席で、上記の改正が立法院で承認されれば、『労働者の権利を保障するため』、実質的に台湾の全労働者を網羅することが確実になる」と述べた。

同改正案は、主に第6条、第8条を対象としており、労働保険事業への強制加入対象下限を、従業員5人以上の企業から、4人以下の企業も含む全企業に変更するとともに、専門職・技術職従業員も対象としている。さらに、強制加入を求められる企業の種類も拡大され、業種としては、水産、保健・医療、医療技術、医療保険、教育機関、公的機関も対象となる。

同改正案では、強制加入対象年齢上限を60歳から65歳に引き上げることに加えて、65歳以上の労働者にも、強制ではなく、任意で労働保険事業への加入を認めている。

さらに、傷病者に対する労働保険金支払い期間も緩和され、当該労働者が既に治療を受けていることという現在の条件から、就労不能となった日の3日目以降になり、また、職業病も明示的に対象に加えられる。

同改正案ではまた、職業病の種類、及び保険金支払いスケジュールの決定権を、中央政府機関である労工保険局に委譲している。

蘇行政院長は、改正によって中小企業に負担がかかることに触れ、行政院の経済部、及び労工委員会に対して、中小企業に対する包括的な支援策を策定するよう指示した。

国家年金事業に関する政策議論

6月に台湾の国家年金事業の議論が行われたが、政府は、社会福祉事業において、保険料の40%を補助金として支出することを計画している。

内政部の国家年金事業試案では、加入者は毎月、保険料の60%にあたる523新台湾ドル(16.43米ドル)を支払い、40年間後に毎月7600新台湾ドル(239米ドル)を受給するとしている。この試案では、加入者資格は、年齢25歳から64歳まで、以前に社会保険事業に加入した経験がない者である。

正社員の大部分は、すでに労働保険に加入していることから、国家年金加入者(全員が主婦その他の無職の者)の数は、約270万人と内政部では推計している。また、最近は、離婚率が高いため無職の主婦に対する一層の保護が必要であると内政部は強調する。

試案による受給者の拠出金額は、労工委員会発表の最低月額賃金、1万5840新台湾ドル(498米ドル)、及び保険率5.5%をもとに、保険料総額を871新台湾ドル(27.36米ドル)である。

李逸洋内政部部長は、「低所得世帯、又は心身障害者を対象に保険料の全額免除を計画中である」と述べている。また、李部長は、「国家年金事業に対しては、厚生福祉くじからの収益で補助を行うことを説明しており、現在までの累計収益は約300億新台湾ドル(9億4200万米ドル)に達しているため、最低4~5年間の同事業への補助のために十分な金額がある」と説明している。同部長によると、「内政部は、国家年金実施から4~5年の後に、くじの売上に対する税率を1%引き上げることも検討しており、これによる増収は360億新台湾ドル(11億3100万米ドル)になる」とも強調している。

新健康保険案

行政院は、5月3日、資金難に陥っている国家健康保険制度の全面改正を図る国家健康保険法改正案を、立法院に提出した。新健康保険事業における保険料の徴収は、現行制度で採用されている個人の給与ではなく、世帯の総収入に基づいて行われ、これにより、台湾国内の給与所得者の約70%を占める低・中所得者に影響があるものと思われる。

野党国民党の議員総会では、議員が党として第二世代国家健康保険事業の実施に強く反対するとしており、同事業を庶民への「健康税」の賦課だとたとえている。同党議員は、同法案を非難しており、台湾の給与所得者の多くは、健康保険料が引き上げられる一方、高所得者層には影響がないと指摘している。

同党議員は、同党が健康保険詐欺の蔓延、薬価の「ブラックホール」と呼んでいる問題こそ、全民健康保険局で膨大な赤字が生じている中心的な要因であり、保健当局がこの問題に対処するまで、行政院衛生署には第二世代国家健康保険事業法案の成立を実現できる見込みはないと警告している。

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