外資系企業の労働組合結成の動き
―ウォールマートで労組結成

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2006年9月

現在中国では、労働者の権益保護が大きな課題となっている。今年3月の全国人民代表大会では、労働契約法草案が打ち出され、政府による労働者保護施策の方向がしめされ、現在草案は一般意見の募集を経て、検討の段階に入っている。また、労働者の権利意識と権利への理解が高まったことで、契約や労働条件をめぐる職場のトラブルも増加の傾向を示している。

ちなみに、政府の発表によると、2005年の31省、自治区、直轄市における労働争議件数は、31.4万件で、2004年との比較でも5.3万件、20.5%の増加を示している。

そういった中、8月5日、31名のウォールマート南京新街支店の店員が支店内に労働組合を結成したことを発表した。これより前、7月と8月の2カ月間に普江支店、深セン湖景支店の各店にすでに組合が成立されており、南京支店の労組は、中国ウォールマートで3番目に設立された労働組合である。

現在、中国ウォールマートは、59支店を有しており、2万3千人の従業員がいる。8月までの2カ月間でさらに6店舗においても労働組合を設立する予定である。

中国では、1995年に労働組合法が成立したが、このときには外資系企業における労組設立は対象外であった。その後2001年の改正で外資系企業も労働組合を設立することができるようになった経緯がある。

現在までわずか25%の外資系企業において労働組合が存在するに留まっているが、中華全国総工会の法律部長郭軍氏の話によると、「年内に外資系企業の労組組織率を60%までに引き上げることを目標としている。」と中華全国総工会の計画方針を述べている(注1)。

今年に入り、胡錦濤主席の主導により中央権利保護安定室が作成した「沿海部における外資系企業の変動要因に関する分析と対策」が発表され、ここでは、法律法規を整備すること、労使関係協調システムを整えること、外資系企業における労働組合設立などが重点事項としてかかげられ強調されている。これらへの対応が企業と社会の安定を確保し、矛盾を解決するものであると位置付けられている。そういった中で、外資系企業での労働組合設立の動きが強化されている状況にある。

ウォールマートは、米国本国においてもユニオンフリーの方針をとっていることで有名であるが、カナダにおいては、すでに2004年に労働組合が設立されている。

中国では、2004年に全人代常任委員会検査班と中華全国総工会の共同による「工会法の執行状況調査」の結果、米国系大手外資系企業で労働組合が設立されていない実態が明らかとなり、中華全国総工会が組合の設立を訴えてきた経緯がある。

当時、これに対して、ウォールマート米国本社社長は、「労働組合の設立は、従業員の自発的な行為によるという中国労働組合法の定めに従い、従業員が希望すれば工会を設立してもかまわない」とコメントしている。

今回の中国ウォールマートでの労働組合設立の動きは、米国本土でも各地の主要なメディアで報じられ、波紋を呼んでいる。一部の米国人研究者の中には、「在中国外資系企業内での労組設立は、欧米企業からの投資の妨げになる可能性もある」と指摘する声もある(注2)。

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