出産休暇の延長をめぐる議論

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  • 国別労働トピック:2006年7月

月収1500リンギ以下の労働者に適用される1955年雇用法は、女性労働者の出産に当たり、60日間の有給出産休暇を取得する権利(注1)を与えている。しかし実際には、女性労働者が妊娠を機に退職を求められたり、60日間の休暇をフルに取得できずに職場復帰を余儀なくされるケースが少なくなく、女性労働者の更なる活用を目指す女性団体等から産休延長を求める声が上がっている。

国連開発計画(UNDP)の専門家によれば、産休が60日以下の国はマレーシアを含め世界に20か国しかなく、他のアジア諸国と比べてもマレーシアは短い方だとされる。

マレーシア労働組合会議(MTUC)は、国の将来の労働力を担うのは女性だとして、産休の90日間への延長と、最低14週間の産休の付与を定めるILO第183号条約の批准を政府に求めている。またMTUCでは、現在の母性保護策の対象が雇用法の範囲内である月収1500リンギ以下の労働者に限られることも問題視し、全ての女性労働者に対する産休の付与を求めている。

一方、マレーシア経営者連盟(MEF)は、産休を30日間延長し90日とした場合の追加的コストは11億リンギに上るとして、企業のコスト負担の増加を懸念している。シンガポールでは産休を60日から84日に延長した際、追加費用は全て政府が負担したとされ、MEFはマレーシアもそれに倣うよう提言している。

6月20日、女性・家族・地域開発省のシャリザット・アブドル・ジャリル大臣は既に60日間の産休が保障されている公務員と同様、民間の女性労働者も最低でも60日間の産休を取得できるようにすべきとの見解を明らかにした。産休の付与日数については、政府内で意見が統一されていないが、55年雇用法の適用対象については、現在の月収1500リンギ以下から2000リンギ以下に変更する案が時期国会で審議される見込みとなった。この理由について、フォン人的資源大臣は管理職以外の労働者を保護するためだと説明している。

参考

  • 6月7日付ニューストレイツタイムス紙、6月21日、22日付スター紙

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