労働時間延長をめぐる公共部門労働者のストが終結

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2006年7月

ドイツの州や市町村などの自治体で働く公共部門労働者(ヘッセン州、ベルリンを除く現業職員約78万人)を組織する公共サービス労組ヴェルディ(Ver.di)と州政府連合による労働協約改定交渉が5月19日に妥結した。合意内容は、旧西独地域における現行38.5時間の週労働時間を、労働者の職位・等級ごとに、州別に平均38.7~39.7時間の範囲で延長することを骨子としている。これにより、2月から15週間続いたストライキがようやく終結した。公共部門でストが実施されたのは、14年ぶりのことである。なお、先にハンブルク州、ニーダーザクセン州およびバーデン・ヴュルテンブルク州の3州が、週労働時間を38.5時間以上、40時間未満の範囲とする協約に合意し、ストから離脱していた。

2005年2月9日、公共部門労使は、連邦政府および自治体で働く約210万人の労働者に適用される新たな一般枠組み労働協約に合意した。しかし、州政府で働く労働者については合意に達しなかった。協約は、連邦政府で働く労働者の標準週労働時間を39時間に延長する一方、自治体で働く労働者については38.5時間を維持した。また、州政府の使用者側が、最長週40時間を上限とする新しい労働時間制度について交渉することを容認する開放条項を盛り込んだ。

今回の交渉では、州政府および自治体当局は当初、賃金引上げなしに週労働時間を40時間に延長すること、および休日やクリスマス手当の削減を要求した。ヴェルディはこれに強く反発し、2月6日には、バーデン・ヴュルテンベルク州の公共部門労働者が、先陣を切ってストライキに突入した。その後、13日には、ニーダーザクセン、バイエルンなど9つの州にストが拡大。対象職場も、託児所のほか、ごみ収集、病院・医院などに広がった。数万人もの労働者がストに参加し、回収されずに残されたごみが路上に高く山積みにされるなど、市民生活にも支障をきたした。マスコミの関心や市民の支持は薄れ、世論調査ではストに対する懐疑的な見方も現れた。

3月に入り、ハンブルク州とニーダーザクセン州において、労使が歩み寄り妥協が成立した。ハンブルグ州では、年齢、賃金水準や子供の養育状況に応じて、週労働時間を38~40時間の範囲で取り決めた。ニーダーザクセン州は、託児所、病院、廃棄物処理などのサービスに従事する労働者の週労働時間は38.5時間を維持する一方、その他の労働者については39時間とした。

バーデン・ヴュルテンベルク州では、9週間続いたストの後、4月5日に労働時間に関する新労働協約の合意が成立した。合意は、標準労働時間を30分延長し、39時間とした。パートタイム労働者には、所得の減少しない週労働時間制が適用される。また、見習生や訓練生については週38.5時間を維持できると規定した。

05年2月の一般枠組み労働協約から離脱した州政府連合は、先に妥結した3州の合意内容をすべて拒否し、州40時間制への復帰を強く主張した。ドイツ西部諸州の公共部門労働者は、ストライキを続行した。一般枠組み労働協約には、ヴェルディが州政府連合加盟組織の一つとでも、週40時間制の合意を締結した場合、連邦および地方レベルの公共部門使用者は自動的にその規定を導入できるとする特別条項が存在した。このため州レベルの交渉は困難を極め、ストライキは15週間にも及んだ。

5月19日に締結されたヴェルディと州政府連合による最終合意は、(1)旧西ドイツ各州の週労働時間を平均38.7~39.7時間とすること(2)給与を08年から約3%引き上げること(06および07年は一時金が支給される)(3)クリスマス・休暇手当を削減すること――などを内容としている。

旧西独地域の労働時間は、最短のシュレスヴィッヒ・ホルシュタイン州の38.7時間から、最長のバイエルン州の39.73時間まで、週当たり約1時間の範囲に収められた。賃金協約の有効期間は08年末であるが、労働時間に関しては08年初頭以降、州ごとに改めて交渉する余地を設けている。なお、旧東独地域では従来からの州40時間制が当面維持される。

参考

  • 欧州労使関係観測所オンライン(EIRO)

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