出身国別賃金格差と移民の社会統合

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2006年6月

ブルーカラーを組織化するスウェーデン労働総同盟(LO)が発表した報告書によると、スウェーデン出身者と海外の出身者の間の賃金格差が月額給与で2000スウェーデンクローネ(SEK)(注1)あることがわかった。その要因として、出身国の要因以外にも、階層や技能の専門性、仕事内容の産業間格差、滞在年数などが挙げられている。LOの報告書とともに移民当局が公表した報告書がうたっている共通の事項は、取り除かれるべき差別が確かにあり、社会統合に向けた取組みが必要である、移民労働者が能力や資質に見合った職業に公正に就くことができるような基盤の整備が必要である、ということである。

スウェーデンの人口の15%がスウェーデン以外の国で生まれた人たちである。その中でも最大のグループはフィンランドからの14万1000人、次にユーゴスラビアからの5万4000人、更にイラクとイラン、ボスニア・ヘルツェコビナからそれぞれ4万4000人と続く。ちなみにスウェーデンの人口は901万人(2004年)。

スウェーデン出身者の労働力率は、83%という高い水準を示すが、海外出身者の労働力率は平均して69%である。近年スウェーデンにやってきたアフリカ、アジア、ラテン・アメリカからの移民に限定すると、労働力率は55%と非常に低い。

ブルーカラーを組織化するスウェーデン労働総同盟(LO)は、4月20日発表した「出身国別の賃金」と題する報告書のなかで、以下のようなデータを公表した。

2003年の統計数値によれば、スウェーデン人の初任給が1万8000SEKであるのに対してスウェーデン人以外の者は1万7100SEKである。月額で900 SEKの賃金格差がある。アフリカやアジア、ラテン・アメリカ出身の移民に限定してみると、スウェーデン出身者に比べて月額賃金が約4000SEK低い。スウェーデン出身者が2万2400SEKであるのに対して、当該地域からの移民は1万8000SEKとなっている。ちなみに、スウェーデン以外の国や地域の出身者全体の平均は2万SEKである。

ただ、この賃金格差がすべて職場における差別的な慣行に起因するというわけではない。格差はむしろ移民労働者が最初に就く職業における産業間の賃金格差によっている。また、スウェーデンに来てからの勤続年数にも依存する。ヨーロッパ以外の出身者は、スウェーデンに来たのが1990年以降と比較的最近であり、そのほとんどはブルーカラー労働者だ。移民労働者でも、長年スウェーデンに滞在している者はスウェーデン出身者と遜色ない賃金水準となっている。1990年代にスウェーデンに入国した移民労働者の平均月額賃金が1万6300SEKであるのに対し、1980年代の移民労働者は1万7000SEK、1970年代は1万8300SEKとされている。だが、ホワイトカラー労働者に関して言えば上記のような関係性が明確に現れているわけではない。平均賃金が一番高いのは1990年代以降に入国した労働者であり、中心となるのはノルディック諸国や西欧、OECD諸国からの労働者である。

政府機関が発表した移民人口の状況に関する報告書(2005年)によれば、2001年以前に入国した移民労働者の64%が職を見つけることができたのに対し、2001年以降に入国した政治難民は40%しか仕事に就けていない。1980年代の終わりに入国した移民労働者の就業率は76%と比較的高いのに対して、1990年代半ばには55%程度に低下してしまった。

一方で、ヨーロッパ以外出身のブルーカラー労働者の中には、高学歴の熟練労働者でありながら、清掃業や皿洗いのような仕事に就いている者もいる。労働組合にとっての大きな挑戦はこのような移民労働者を、労働市場のすべての部分にアクセスできるようにすることである。LOのエルランド・オルオーセン副委員長は「移民労働者の能力や資質に合致した職を得る権利が与えられるべきである。労働市場において移民労働者の社会統合を推進しなければならない。民族を融合させるためには差別を根絶しなければならない」と主張している。

移民局の示す社会統合のあり方は以下のようなものである。

移民労働者、特に政治難民に対しては適正な職に就くサポートをすべきであり、そのためには労使が協力しなければならない。取り除かれるべき差別の要因が確かにある。都市では居住地域がスウェーデン出身者と海外の出身者で分離する傾向が強まっており、移民労働者の第二世代が職業生活において差別に直面しないよう対処が必要である。現在の分離状態は非常に高い若年者失業の主要な原因となっている。とりわけ若年の移民労働者の失業率は顕著に高い。

参考

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