最低賃金引き上げ法案、下院で承認

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  • 国別労働トピック:2006年6月

法定最低賃金の一律125ペソ引き上げを認める法案は、2005年の本会議で審議されながらも、アロヨ政権に対する選挙不正疑惑調査や大統領弾劾告発等に関心が集中し、以後、同法案の議会審議は棚上げ状態にあった。こうした現状から、TUCPは最低賃金引き上げの法制化が現実的ではないと判断。従来の賃上げ要求に切り替え、2006年5月16日、マニラ首都圏の地域賃金生産性委員会(NWPC)に、1日当たり75ペソの賃上げを要求した。

首都圏の1日あたりの法定最低賃金は現在、325ペソ。他の地域と比較すると、最も高く設定されているが、TUCPは、生活必需品の価格が著しく上昇するなか、物価高騰に対する給与調整として46ペソ、労働者の経済貢献への評価として29ペソの合計75ペソの賃上げが必要であると主張していた。ちなみに、首都圏以外の地域では、西部ビサヤ75ペソ、中部ビサヤ95ペソ、北部ミンダナオ75ペソ、南部ミンダナオは最も高い150ペソの賃上げ要求が提出されている。これに対し、雇用者連合(ECOP)は、「賃上げよりも、雇用創出が最も重要な課題である」と主張。賃上げに反対する姿勢を明確にした。

こうしたなか、下院議会では、125ペソの一律賃上げを法制化する動きが活発化。5月31日には、特別委員会で、125ペソの賃上げ法案を可決した。同法案では、賃上げは段階的に実施(06年10月に45ペソ、07年10月に40ペソ、08年10月に40ペソ)するとしている。

法案推進派は、生活必需品や燃料の物価高騰に苦しむ労働者を支援する法案であると主張。一方、国家経済開発庁(NEDA)は、同法案はインフレ上昇、経済成長停滞を招き、結果的には失業者の増加に繋がるという考えを明らかにするとともに、地域の賃金設定は地域生産性委員会が行うべきであると強調。議会が賃金設定を行うことに強い反発を示した。こうした賃上げ法制化の動きには、企業側も強く反対しており、今後の動きが注目される。

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