中途退学者、7月よりデュアルシステムのコースを利用開始

カテゴリー:若年者雇用人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2006年6月

4月6日付ニューストレイツタイムス紙によれば、第9次マレーシア計画(経済開発5か年計画)に示された人的資源の開発という目標を達成するため、7月から、中途退学者がデュアルシステム(注1)を利用できるようにすると人的資源大臣は述べた。

中途退学者問題は教育省も重視しており、5年間で中退率をゼロにするとの目標を掲げ、様々な対策を実施中である。中退の主な理由は貧困等の問題ではなく、現在の教育システムに適応できない生徒や、学習意欲の低い生徒に対する配慮が欠けていることにあるとされる。

人的資源省では、デュアルシステムの応募者受け入れに際し、年齢や初等教育を修了したかどうかなどについては柔軟に対応する方針である。7月以降の1年間で学校の修了資格を持たない5000人をデュアルシステムに取り込むことを目指し、3年から4年間、民間の企業で訓練を受けつつ、学校で学科も学べるようにする。

また教育省のホン副大臣は、中途退学者ゼロに向けての取り組みの一つとして、中等学校では職業科目を増やし、また現在職業教育を行っていない学校でも開始すると述べた。

マレーシアの学校制度は、6(初等教育)-3(前期中等教育)-2(後期中等教育)-2(上級中等教育=大学予備教育課程)-3(高等教育=大学)制をとっている。日本の小学校、中学校に当たる初等教育、前期中等教育は義務教育化されていないが、フリー・エジュケーションと呼ばれる制度の下で、学校教育は無償化され、初等教育学校への入学率はほぼ100%、前期中等教育学校への入学率は85%を超えている。現在、問題化しているのは初等教育学校や前期中等教育学校の退学者(ドロップ・アウト)が目立つことに起因する。

この背景には、日本のように「保護者にその保護する子女の就学を義務づける」義務教育の導入が困難な社会構造がある。すなわち、初等教育学校には、(1)マレー語で授業を行う国民学校(マレー語学校)、(2)中国語で授業を行う国民型学校(中国語学校)、(3)タミール語で授業を行う国民型学校(タミール語学校)、(4)特別学校(主として英語で授業を行うものが多い)、の4種類があり、中国語学校、タミール語、特別学校に就学年齢者の25%が在学している。1995年に始まったビジョン・スクール構想に基づき、マレー語学校、中国語学校、タミール語を同一敷地内に設置し、生徒、教員の交流を図るという試みも進められ、成功をおさめていると伝えられるが、複合多民族社会の安定を保つためには、急激な制度の変更は難しい。

現在、マレーシアの労働力人口約1000万人の20%を外国人労働者が占めており、この比率は上昇する一方であるが、第9次マレーシア計画では外国人労働者比率の抑制を打ち出しており、今回の学校中途退学者をデュアルシステムにより再教育して活用する方針は、この外国人労働者比率抑制策の一環ともいえよう。

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