国家雇用保障法に基づく雇用対策を開始

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2006年6月

2006年2月、政府は貧困世帯向けの雇用対策「雇用保障計画(Employment Guarantee Scheme)」を全国200の大規模貧困地域で開始した。

雇用保障計画の概要

雇用保障計画では、貧困世帯を対象に年間100日の雇用を法的に保障し最低賃金を支払われ、雇用が保障できない場合には代わりに同等の失業手当を支給される。

農村開発、貧困者救済といった「社会的弱者に優しい政権(Common Minimum Programme:CMP)」を基本方針とする統一進歩連盟(UPA)にとって、国家雇用計画の早急な実施は2004年の政権発足当時から掲げた目標。しかし、予算規模が非常に大きい(注1) などの理由から、同計画の根拠法である国家雇用保障法(National Employment Guarantee Act)の審議は難航、成立が2005年8月にずれこんだことから、計画自体の開始も当初の目標から大幅に遅れることになった。

今後の運用に不安の声も

ようやく実施にいたった雇用保障計画に政府は大きな期待を寄せており、対象地域は今後5年間で500に拡大される予定だ。しかし、ビハール州やアッサム州といった貧困地域では雇用が伸びているにも関わらず、貧困率が改善していないことから、雇用創出は必ずしも貧困削減につながらないのではないかという懸念も生じている。

この背景には(1)インドにおける貧困人口の約8割が農業労働者であるにも関わらず、技術進歩のための投資が積極的に行なわれてこなかった結果、農業労働者の大半が依然として非常に非効率な作業に従事していることが考えられる。その中でも社会的弱者といわれる女性、低カーストや指定部族の人々、土地を持たない人々をいかに地域雇用に結びつけていくかが、同計画にとっての大きな課題といえる。

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