労働組合組織率、引き続き下落、なおも80%以上を堅持
2005年の労働組合組織率が発表された。LOとTCOは組合員数が減少し、SACOは微増となった。1998年には89%と言う高水準を示していたスウェーデンの労働組合組織率。近年低下傾向が続いているものの、依然として80%以上という高い水準を堅持している。
2005年の労働組合組織率が発表された。スウェーデンにはナショナルセンターが三つある。それぞれの組織員数については下記の表1を参照。表1からもわかるように、ブルーカラー労働者を組織する労働組合総同盟(LO)は1.6%のマイナス、ホワイトカラー労働者を組織するホワイトカラー中央労働組合連合(TCO)は1.2%のマイナスであった。両者とも昨年に引き続き減少させる結果となった。一方、専門職を組織する専門職労働組合連合(SACO)は2.0%の微増となった。スウェーデンにおける労働組合組織率は、1998年には89%と言う高水準を示していた。だがその後年々下落傾向が続いている(図1を参照)。とはいうものの、依然として80%以上という高い水準を堅持している。
組織率低下の要因は製造業や建設業での雇用者数の減少による影響が大きい。一方、サービス業については雇用者数、組織人数ともに上昇している。LOに加盟する二つの主要組合である小売・卸売業関連組合や運輸労働者組合は組織率を上昇させている。ところが、新たに組織化されたメンバーは若年者であり、かつ非正規雇用者である場合が多い。とはいうものの組織化できていない労働者が多くいることも確かである。一般的に雇用形態の不安定なサービス業の従業員は組織化が難しいとされている。特に、彼らの多くは近年移民としてスウェーデンにやってきた者で、その母国は長年にわたって労働組合の文化そのものがないような国であるという事情が組織化の難しさにつながっている。
一方でSACOは、入手可能なデータによると1998年以降着実に組合員数を増加させている(図2参照)。これは、大学関係者の人数が増加していることの反映である。SACOは学生に対して非常に格安な組合費しか徴収しない。その水準はTCOとは桁違いなものである。それに加えてたとえ学生が典型的なホワイトカラー職に就いたとしても同じように安い組合費しか徴収しない。しかも、LOとTCOの間では組合員を引き抜きしない合意が見られるが、TCOとSACOの間では見られない。
全国労働組合 | 組合員数 (人) |
増減率 (%) |
|
---|---|---|---|
スウェーデン労働組合総同盟(LO) | 1,831,385 | △1.6 | |
1 | 地方自治体労働者組合(Kommunal) | 568,286 | △1.0 |
2 | 金属労働者組合(Metall) | 358,318 | △3.0 |
3 | 小売・卸売業労働者組合(Handels) | 172,300 | 0.2 |
4 | サービス・通信業労働者組合(SEKO) | 153,081 | △2.0 |
5 | 建築及び建設労働者組合(Byggnads) | 128,237 | △0.4 |
6 | 化学産業労働者組合(Industrifacket) | 82,180 | △3.6 |
7 | 運輸労働者組合(Transport) | 74,086 | 2.0 |
8 | ホテル・レストラン労働者組合 | 57,540 | △2.0 |
9 | 森林労働者組合 | 53,371 | △0.6 |
10 | 食品労働者組合(Livs) | 48,285 | △4.3 |
11 | 建物管理労働者組合(Fastighets) | 39,243 | △0.1 |
12 | グラフィック産業労働者組合(Grafiska) | 26,657 | △4.8 |
13 | 電気労働者組合 | 26,088 | △1.6 |
14 | 紙工業労働者組合 | 23,570 | △1.6 |
15 | 塗装工労働者組合 | 16,685 | △1.9 |
16 | 音楽産業労働者組合 | 3,458 | △1.6 |
ホワイトカラー中央労働組合連合(TCO) | 1,258,486 | △1.2 | |
1 | 事務・専門職労働者組合(SIF) | 354,797 | △2.5 |
2 | 教職員労働組合(Lararforbundet) | 228,273 | 0.1 |
3 | 商業・運輸労働者組合(HTF) | 168,665 | △0.5 |
4 | ヘルスケア労働者組合(Vardfacket) | 112,486 | △0.2 |
5 | 政府職員労働組合(ST) | 97,315 | 0.6 |
6 | 銀行従業員労働組合(Finansforbundet) | 39,924 | △0.9 |
7 | 警察職員労働組合(Polisforbundet) | 21,790 | 2.2 |
8 | ジャーナリスト労働組合(SJF) | 17,449 | △0.3 |
9 | 民間保険会社従業員労働組合(FTF) | 14,575 | △2.6 |
10 | 俳優労働組合(Teaterforbundet) | 8,916 | 0.8 |
11 | 製薬業労働組合(Farmaciforbundet) | 7,727 | 2.1 |
12 | 下士官労働組合(Forsvarsforbundet) | 6,248 | △4.3 |
13 | 税関職員労働組合(Tull-kust) | 4,103 | △1.7 |
14 | 国民高等学校教員組合(SFHL) | 2,227 | △0.9 |
15 | 交響楽団員労働組合(Symf) | 2,139 | △2.2 |
16 | 森林農業労働者組合(SLF) | 1,070 | △7.0 |
専門職労働組合連合(SACO) | 580,566 | 2.0 | |
1 | 技術者労働組合(CF) | 104,547 | 2.9 |
2 | 中学・高校教員労働組合(LR) | 82,626 | 1.0 |
3 | 法律専門家労働組合(Jusek) | 74,832 | 5.2 |
4 | 大卒専門職一般労働組合(SSR) | 50,146 | 7.3 |
5 | 医師労働組合(Lakarforbundet) | 38,677 | 1.7 |
6 | 図書館司書労働組合(DIK-forbundet) | 21,316 | 1.7 |
7 | 自然科学者労働組合(Naturvetarforbundet) | 21,001 | 18.3 |
8 | 大学教員労働組合 (SULF) | 20,100 | △1.4 |
9 | 軍人労働組合(Officersforbundet) | 16,862 | △4.9 |
10 | 大卒技術者労働組合(Ingenjorsforb) | 14,402 | 1.1 |
11 | 物理療法士労働組合(LSR) | 11,937 | 3.0 |
12 | 政府官理職労働組合(SRAT) | 11,803 | 2.0 |
13 | 建築士労働組合(Arkitekterforbundet) | 9,694 | 1.6 |
14 | 職業セラピスト労働組合(FAS) | 9,433 | 0.0 |
15 | 歯科医師労働組合(Tandlakarforbundet) | 8,931 | △1.9 |
16 | 心理学者労働組合(Psykologforbundet) | 8,549 | 2.6 |
17 | 農耕学者労働組合(Agrifack) | 8,096 | 1.4 |
18 | 薬剤師労働組合(Farmaceutforbundet) | 7,654 | 1.1 |
19 | 学校長労働組合(Skolledarna) | 7,354 | 0.1 |
20 | 聖職者労働組合(Kyrkans akademikerforb) | 5,318 | △0.9 |
21 | 運輸及び鉄道労働組合(Trafik & Jarnvag) | 4,399 | △0.1 |
22 | 予備役将校労働組合 (SROF) | 3,858 | △7.2 |
23 | 商船乗組員労働組合(Fartygsbefalsforbundet) | 3,670 | △0.7 |
24 | 獣医師労働組合(Veterinarforbundet) | 2,545 | 2.1 |
25 | 林業職員労働組合(Skogsakademikerna) | 2,169 | 0.0 |
図1:スウェーデンの労働組合組織率の推移
図2:各ナショナルセンターの組合員数の推移
『Statistical Yearbook of Sweden』などより作成
出所
- 当機構委託調査員レポートなど
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