金属産業の賃金交渉が妥結

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2006年5月

1月に開始されたドイツ金属産業の賃金交渉が4月22日、重点地区のノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州地区で妥結した。NRW 州地区で合意された賃金協約には、3%の賃上げ(6月~来年3月)と310ユーロの一時金支給(3月~5月分)が盛り込まれた。合意内容は、ドイツ全地域の交渉に影響するモデル賃金協約としての意味合いを持つ。

難航続いた賃金交渉

自動車や電機産業などの労働者約240万人を組織するドイツ金属産業労組(IGメタル)は、2月末を期限としていた旧賃金協約の改定交渉に際し、当初5%の賃上げを要求した。これに対し、経営側は、賃上げは生産性上昇の範囲内でなければならないとして、1.2%の賃上げを主張し、平行線が続いていた。

ちなみに、2004年の前回賃金交渉では、4%の賃上げ要求に対し、04年3月から2.2%、05年1月から2.7%と二段階の賃上げ実施で合意している。

労使交渉に際しストライキを行使しない「平和維持義務」期限の3月末が経過しても交渉に進展がみられないことから、労組側はダイムラー・クライスラー、ポルシェ、ボッシュなどの工場で、断続的な警告ストを実施した。一方、経営側は1.2%の賃上げと企業業績に応じた一時金の支払いを提示。続いて、2%の基本賃上げと生産性向上に応じたさらなる1%の賃上げなどの譲歩案を示したが、労組側は受け入れなかった。労組幹部は、経営側が4月25日までに満足いく回答を示さない場合、全面ストライキのための組合員投票を実施すると警告した。

一時金に業績格差を盛り込む

4月22日に合意された内容は、6月から来年3月までの10カ月間の3%の賃上げと、3月から5月分の一時金として310ユーロを支払うもの。一時金に関しては、事業所委員会の合意を前提に、企業業績に応じて、0~620ユーロまでの増減幅を認めた。ドイツの賃金交渉では業績に応じた一時金支給は珍しい。これに関し、メルケル首相は「非常にタイムリーな解決法である」と評価した。

労組幹部は一定の評価

IGメタルのペータース委員長は、「よい妥協が成立し、ストライキを回避することができた。合意内容は全国の金属労使に受け入れられるだろう」と評価。NRW州IGメタルのヴェッツェル委員長は、「3%の賃上げは妥当な線と言える。一時金の差別化措置は、経営側が単に命令するわけではなく、事業所委員会を説得する必要がある」と述べ、業績反映による一時金の減額にクギを刺した。

経営側はコスト増に不快感

一方、ドイツ使用者連盟(BDA)のフント会長は、「合意は、賃金協約の弾力化と事業所ごとの創意工夫の可能性の点で目覚しい進歩と言えるが、コスト的には耐え難い負担にほかならない」と指摘。金属産業経営者連盟(ゲザムトメタル)のカーネギーサー会長は、「合意は、経済的に可能な上限ギリギリの数字である」と語った。ドイツ機械工業連盟(VDMA)のヘッセ会長も、合意内容を非生産的であるとし、「企業の生産性と雇用保障を妨げるものである」と述べるなど、経営側は総じてコスト負担増への不満をにじませた。

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