マレーシア労働組合会議(MTUC)分裂の兆し

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2006年4月

3月13日付スター紙の報道によると、ナショナルセンターであるマレーシア労働組合会議(MTUC)(注1)に分裂の兆しがあることが明らかになった。MTUCに加盟する265の組合のうち、約20の組合が、現執行部への不満を理由として労働運動の変革を訴え、MNWO(注2)と呼ばれる新組織設立に向けた準備委員会を立ち上げた。分裂派は今後、MNWOを結社法(Societies Act 1966)上の法人として登録するための準備に入る予定である。なお、マレーシアの労組法(注3)によれば、MNWOはナショナルセンターであり、労組法上の労組としての登録はできない。

背景にMTUC内の派閥対立か

分裂派を率いるのは、マラヤ鉄道組合のアブドル・ラザク委員長など、前MTUC委員長であるランパック・ザイナル氏を推すグループである。ザイナル氏は2004年12月の選挙において現委員長のサイド・シャヒル氏に敗れ、退陣したが、それまで20年間に渡り、MTUCのトップを務めてきた。現地紙の報道によれば、MTUCの内部では過去10年間以上に渡り、ザイナル派と現事務局長のラジャセカラン派の対立が続いていたとされる。ラジャセカラン氏はザイナル氏が委員長を務めていた時代から、事務局長の任に当たっており、前回選挙の際も事務局長の座を守った。

ザイナル氏は新グループ設立に向けた一連の動きへの自身の関与を否定しているが、同氏がトップを務める輸送労働組合(Transport Workers Union)(注4)はMNWOに加盟する意向を示している。

関係者の反応と分裂の及ぼす影響

分裂派の動きに対して、現MTUC委員長のサイド・シャヒル氏は、対話を重ねることにより分裂を回避できると見込んでいる。一方、3月13日の会見においてフォン人的資源相はこの件についてコメントし、政府は中立的な立場から、この一件が穏便に解決することを望むと述べた。

MTUCの規約によれば、加盟組合は3カ月ごとに均等払いで組合員一人あたり年間1リンギを上納しており、一組合あたり最低で年間150リンギ、最高で年間4万リンギと定められている。現地紙の報道によれば、約10万人の組合員の離脱が予想されており、分裂が現実のものとなれば、MTUCの財政に少なからぬ打撃が及ぶものとみられる。

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