ビアジ改革から2年:その成果は?

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  • 国別労働トピック:2006年4月

1.問題の所在

労働市場改革に関する「ビアジ法」(注1)の施行(注2)から2年が経過し、イタリアの労働法の学説は、その効果および将来像について評価を行うようになってきた。しかし、第14国会の閉会が間近に迫っていることが、この議論を難しくしている。つまり、最近のドイツやノルウェーでそうであったように、総選挙戦の政治的な影響がこの学術的な問題にも波及し、非常に制限された議論になっている。

同改革の成果に関する技術的かつ経験主義的分析は、このように政治的・イデオロギー的な先入観にとらわれた評価によって、多くの場合損なわれている。この結果、学説の議論状況は、2003年法律30号が公表された直後どころか、2001年10月の白書が提示した労働市場改革案および基本指針のころと比べても、ほとんど前進していないようにみえる。2003年法律30号および同法の実施令に関しては、実施段階初期に伴うさまざまな不備を全く考慮することなく、同法の成立直後に否定的な評価がなされ、今日では、不安定性や労働の商品化の象徴として、単純な廃止ではないにせよ、根本的な見直しの必要性が主張されるほどである。

ところで、信頼に足る主たるデータ測定センターが提示するものの中には、ビアジ改革を中断に追い込むような雇用に関するデータはほとんどない。イタリアは、ここ数年正規雇用率が一貫して増加し、臨時雇用が大幅に縮小した唯一の国である(注3)。失業率は7.7%まで劇的に低下した。これは、ヨーロッパ平均(8.3%)を下回り、フランスやスペイン、ドイツのような10%の壁を切ることのできない国に比べて、長期間にわたる状況の改善がみられる。

ISTAT(国立統計局)による1992年から今日までの統計をみると、労働市場の主たる要素のすべてについて肯定的な結果が出ている(表1を参照)。それでも、「トレウ法」から「ビアジ法」という労働市場の現代化でなされている多大な努力は、なかなか理解されていない。少なくとも数年前までは、EUや他の国際機関によって、イタリアの労働市場はヨーロッパの中でももっともひどいと嘆かれていたのだが。

出典:ISAE(経済研究分析機関)、2005

次の章で述べるが、2003年委任立法276号1条が望んだように、「ビアジ法」が正規雇用率を高め、労働の需要と供給の合致を規制する法規を実効的なものにしたことを裏付けるような明確なデータはない。確かに、雇用に関する指標が好調なことに関しては、多くの論者が指摘するように、非正規移民の多くを正規化する措置(2002年のいわゆる「ボッシ・フィーニ法」)の影響もあった。しかし、ビアジ改革は逆効果であるといった、学説が行った非常に厳しい批判に対して反証することは可能である。精密なすべての経験主義的評価や計量経済学的な分析が示しているように、事実は全く逆でさえある。

ビアジ法の施行から2年が経過して明らかになったことは、まず、非常に懸念されたイタリアの労働市場の不安定化が生じなかったことである。政党や労働組合のプロパンガンダはおくとして、信頼にたる国際比較であれ、1992年から2004年にかけてのINPS(全国社会保障機関)やISTATのデータであれ、臨時雇用や非典型雇用が1995年から今日まで基本的に一定であることを示している。表2からわかるように、2200万人強の労働人口に対し、こうした不安定雇用の労働者は200万人弱であり、うち3分の1が労働訓練を含む内容の契約を締結した労働者である。したがって、かりにイデオロギーを交えて話をするとしても、ビアジ改革が労働市場を(否定的な意味で)急激に変えたと考えることは的外れである。イタリアの労働市場の大部分は、現在でも期間の定めのない安定的な労働関係に基づいて成立している。

表2:形態別就業者数(単位:千人)
  2003 2004
  30歳未満 30歳以上
被用者 16,040 16,117 3,404 12,714
 無期 14,070 14,209 2,564 11,664
 有期 1,970 1,909 840 1,069
  見習労働者 495 561 559 2
  訓練労働契約 191 127 107 20
  派遣労働者 98 112 67 45
  それ以外の有期 1120 1109 107 1002
自営業者 6,201 6,287 860 5,427
 プロジェクト労働(cococo) - 391 134 257
 請負労働 - 106 39 67
22,241 22,405 4,264 18,141

出典:ISTATおよびINPSのデータに基づき労働社会政策省が作成、2005

アリス・アッコルネーロが監修したCNEL(経済労働国民会議)の報告書(2004年7月に公表されたCNEL2003年報告書)ですでに示されていたことだが、ISTATの最新データ(2005年第2四半期労働力測定)は、連携的継続的協働労働(cococo)と偶発労働とのグレーゾーンの状況についても明らかにした。連携的継続的協働労働者のための独立年金事業への加入者は300万人を超えるが、実際の準従属労働の枠組みで就労しているのは50万人強である(協働労働者の大部分が、単一の注文主のために、連携的継続的協働労働としての独立労働の提供と評価される就労活動を行っている)。

実際、闇労働市場というイタリアの重大問題は多くの点で未解決のままであり、他の先進諸国と比べると、その規模は実に3倍から4倍を超える。この点、ビアジ法がこのイタリアの労働市場の歴史的な汚点に取り組み、また、その主たる目的の1つが、闇労働および非正規労働といった「不適切な弾力性」に代わって「正規の弾力性」という実践的で賞賛すべき途を提供することだった点を考慮すると、ビアジ法はこの問題にほとんど影響を与えることができなかったといえる。

ビアジ法に対しては、不適切な(また無用でもある)法的契約類型を増殖させ(注4)、「弾力的な44の類型」を持ち込んだ罪(注5)という非難がなされているが、契約類型の増加は見かけ上のものであり、いずれにせよ最低限だと反論されてきた(注6)。契約類型の数という些細な問題はさておき、各労働契約が1つになって、契約上または類型上の特別な弾力性を構成していることに照らせば、ビアジ改革は広漠な闇労働の領域に立ち向かうことを目指していたといえる。労働市場と労働者自身にとってプラスになる労働の組織化の形態から、実態として蔓延している違法な形態を区別した上で、社会規範の欠如状態の中で今日まで続く労働システムとの関連でこの目的を捉えなかったならば、改革の真の最終目的であった(また、この側面もいまだ残っている)労働憲章の法典化は、具体的な基礎のない夢物語になったであろう。

2.成果を図るべき時期なのか?

ビアジ法の労働市場に対する影響を分析する際に、簡潔で概略的な考察にとどまろうというのなら、これまで改革の最低限の評価を行ってきた者には理由があったということになろう。しかしながら、こうした最低限の評価は、過去と連続した多くの点を説明するには不十分であるだけでなく、企業実務にとってはあまり役に立たない。

論者の中には、多分に主観的で(我々の考えでは)事実無根といっていいような論調で、ビアジ改革のことを無用だとか技術的に準備不足とか評価するような者もある(注7)。ビアジ改革が導入しようとした弾力性は、労働の保護の強化を修復不可能なまでに破壊するだけでなく(注8) 、新しい経済から要求された人材に対する投資の要請と相容れないような過剰で粗野な弾力性、または、非常にコスト高であり、そのために企業システムにとって魅力がないに等しい弾力性(注9)と批判される傾向があった。

しかし、我々の意見(そして、CNELのような権威ある機関の意見でもあると思われるが)(注10)によれば、ビアジ法に真実の評価を下すのは時期尚早である。なぜなら、後述するように、同法に含まれる措置の大部分は、事実上確固とした前例のないものだったからである。

国会において、満場一致の横断的な合意が形成された協働組合形態の労働類型に関する改革だけが、たいした問題もなく企業に受け入れられたようである。企業においては、ビアジ改革の残りの仕組みのすべてが(狭義の就業サービス改革のように過去との連続性があることが明らかなものでも)、2001年11月15日法案848号で提示された原案の段階から強い反発を受けた。いわゆる「事前契約(precontratti)」という変則的かつ有害な慣習、つまり、国の法律として通用しているものを適用しないことをその信念とするかのような組合の合意を成立させることになったのである。

ビアジ法の施行以降の2年が、同法がイタリアの法制度に根付くための重要な期間であったことは否定できない。憲法裁判所は、2005年1月28日判決50号および2005年10月11日判決384号で、国と州との権限の配分という複雑な問題に関して、ビアジ法やその実施令に関する多くの違憲性の疑いを、ごく簡単な文言ですべて否定した。同様に、ビアジ改革に関するほぼすべての規則は、(従来に比べてという意味ではあるが)速やかに実施された。多くの州、とくにビアジ法を承認した議会多数派と対立する勢力の強い州でもそうであったように、(ごく稀なケースを除いて)(注11)国の法律により受け入れられた立場を州の側でも維持して、システマティックに法整備を行った。

最後に、労使が重要な役割を果たしていることを指摘しておかねばならない。集団的な自律性が歪曲され、労働関係の過剰な個別化が進むという一般に言われている懸念をなくすために、労使は、実に43もの事項を団体交渉に委ねることが効果的であると主張した。かりに、労使が、1ないし複数の同盟間協定(地域レベルでも可)を通じて改革の実施を自律的に運営するという2003年委任立法276号86条13項の規定を受け入れていたなら、改革の実施初期段階に対する評価はかなり違ったものになったであろう。しかしながら、労使が同盟間協定を通じての運営を決めたのは、訓練労働契約から組入契約への移行に関する点だけであった。その他の、たとえば見習労働契約のようなビアジ改革のもっとも「中立的な」制度を認めることも断念したのである(見習労働契約については、新たな法的枠組みへ移行する試みが後に再び挫折した)。

全体の枠組みがこのように曖昧で不透明なことを考えると、これから履行すべき点を多く残す改革の評価を今の時点で行うことは、全く困難であるように思われる。法律の潜在性、対象の広さ、そして、複数の主体を規制するという複雑さのために、多くの者が法律の最低限の影響しか議論できないのであるから、そうした評価に正当性を認めるのはいまだ尚早と思われるが、この点はほとんど指摘されていない。

こうした考察は、改革の施行以降の2年を正しく議論するために無視しえないように思われるが、これをおくとしても、ビアジ法の長所あるいは短所に関する信頼に足る評価は、国の法律である同法の試験措置段階が終わった後に初めて可能なものと考えられている。

ビアジ法の起草者であったマルコ・ビアジ教授自身が、イタリアの労働市場改革の端緒となった有期労働に関する新規制のコンメンタールで警告していたように、「実践面においては、真の改革は法律というよりは文化的なものでなければならず、ここで解説する委任立法を解釈しようとする姿勢からしてまさに、そのような心構えでなければならない。労働市場の現代化は、以前からEU機関により要求されてきたものであり、これに対する積極的な姿勢があらゆる方面から求められる極めて複雑で繊細なプロセスである。制度の運営者だけでなく、労使や労働法学者にも今日必要とされているのは、疑惑や不和に基づく文化(法的な文化を含む)を脱却しようとすることである」(注12)。

3.試験的な改革か?

立法者自身は、少なくとも部分的には試験的な性質をビアジ改革に与えようとしていた。2003年委任立法276号86条12項は、実際次のように規定している。「13条,14条,34条2項、第3章、第7章第2節および第8章の規定は試験的な性質をもつ。法の施行日から18カ月経過後に、労働社会政策省は、17条にいう収集された情報に基づいて、全国レベルでもっとも代表的な使用者および労働者の組合組織とともに、規定の効果を確認し、3カ月以内にその有効性を改めて評価するために、議会に報告する」。

実際のところは、2003年委任立法276号で定められた制度のすべてが、86条12項にいう確認の対象となったわけではない。2003年委任立法276号の試験的性質は、少なくとも形式的には、不利な立場に置かれた労働者集団を労働市場に組入れ、ないし、復帰させるためのパイプと公共部門に対するインセンティブ措置(2003年委任立法276号13条)、社会協同組合を通じた、不利な立場の労働者および障害をもつ労働者の労働への組入れに関する規定(同14条)、25歳未満の失業状態にある者または生産サイクルから排除されたか労働移動リスト(注13)および職業紹介リストに登録された45歳を越える労働者に関する派遣労働の規定(同34条2項)、労働者供給、サービス請負および出向に関する規定(同3章)、付属的性質の偶発的労務給付に関する規定(同7章2節)、労働契約および請負契約の認証手続に関する規定(同8章)の規定に限定されていた。

逆に、許可および認可を通じた労働市場の組織化および規制に関する2003年委任立法276号の主たる次の制度は、試験的な性質をもたない(したがって、86条12項にいう確認の対象から形式的に外れる)。つまり、全国継続労働取引制度、労働の供給と需要との合致の段階における官民の主体の行為を規制する規定、営業譲渡および企業グループに関する規制、訓練の側面を含む労働類型および3つの見習労働過程との調整、労働時間を短縮、調整または弾力化した労働契約類型、パートタイム労働、ワークシェア、非継続的または間欠的給付の実現のための派遣労働、プロジェクト形態で実施される連携的継続的協働労働および架空の匿名組合契約に対する罰則制度である。

2003年法律30号で構想されたような複雑かつ急進的な改革が完全に実施されるようになるには、2003年委任立法276号86条12項で定められた2年間よりはるかに多くの時間を要する。このことが理解されたために、立法者は、政府と労使との確認手続の対象となる制度を限定し、残りはさしあたり留保したのである。

改革の承認に先立って行われる使用者組織および労働組合との討議(2003年法律30号7条で義務とされている)の際に、この確認手続は、イタリアの法的伝統にとってより新規的な点や、イタリアの労働市場への効果および影響に関して慎重で精密な監督を必要とする新しい制度に確認手続を集中することが決定されていた。にもかかわらず、同じく労使との討議において、政府は、2003年法律30号が労働市場に及ぼす影響の政治的および技術的な評価を分けては下しえないという認識から、改革の対象たるすべての制度をまとめて評価することを「非公式に」決めた。

しかし、86条12項の規定上のものにせよ、改革全体にせよ、いずれにしても評価はなされなかった。

少なくとも2003年委任立法276号が成立した時期において、政府と労使との協議を難しくした「政治的な」理由は多くあるが、この点については、すでに触れた次のような状況を指摘するだけで十分であろう。つまり、試験的な制度のもっとも重要なもの中には、州ないし労働組合の実施規定の制定を待つ間に、動きが取れなくなったものがあったのである。象徴的なのは、2003年委任立法276号13条および14条のケースである。最近になって、州レベルで部分的な実施の対象となったが、場合によっては憲法裁判所2005年判決50号が出るまで、労働問題に関する国と州との権限配分との関係で緊張関係に置かれた規定もあった。しかし、いっそう問題なのは、州や労使の組織的妨害を受けたために制度が動かなかった場合もあったことである。

後に、プーリア州では、見習労働に関して問題のある規制が敷かれた結果、国の法律と正面から対立して、国とプーリア州との長く無益な争いを惹起した。このため、若年者や企業が、労働の需要と供給とを合致させるための重要な本手段を利用することができなかった。こうしたことは、法の安定性に対する打撃でしかない。

2003年委任立法276号が定める多くの制度の実施時期が、国と州との権限配分に関する州の憲法裁判所への訴えのために遅れたことは事実である。州や労使などのあらゆる当事者が、改革の主たるテーマ、すなわち、有資格の民間主体の(とくに労働者供給制度に関する)許可制度、官民の連携および認可制度、不利な立場に置かれた労働者および障害をもつ労働者の組入れに関する協定、訓練を内容とする労働契約類型、労働組入契約、夏季の研修制度、パートタイム労働契約、付属的偶発労務給付に対する規制、労働関係の認証手続ならびに監督・検査事業の権限などに対する国、州および労使の権限に関する憲法裁判所の判断の行方を見守っていたために、委任立法の影響という点で重要な規定の始動が著しく遅れたのである。

2003年法律30号に対する州の違憲申立てを詳細に回想することで明らかになるように、労働組合運動からの急進的な反発とともに、改革の監督や評価が行われるはずだった各実施段階が歪められ、ビアジ改革のあらゆる影響は大きく損なわれた。

したがって、反発を恐れずにいえば、改革の真の意味での試験的措置は実施されなかったということができる。すなわち、ビアジ法のプラスないしマイナスの影響を評価するのに必要な労使関係における政治的な「風土」が形成されなかった。むしろ、ある点では、ほとんどすべての当事者が、イタリアの利益を考慮して実施すべき唯一のこと、つまり、法律を適用し、支持者と批判者のいずれが適切であるかを評価することを忘れ、ビアジ法およびその関連法の承認および公布の際に、これらに対する政治的・イデオロギー的な激しいキャンペーン活動を行う方を選んだ(注14)。

改革の試験的措置が実施されなかった理由に対する議論にとっては重要でないので、こうした対立の核心は措くとして、2003年法律30号および2003年委任立法276号の影響および規制の有効性を確認できたのは、ようやく憲法裁判所2005年判決50号が出されてからである。この判決によって、国の法律によって定められた制度に関するあらゆる不透明な領域は一掃された。

国と州との権限の分配が長い間不透明であったことは(注15)、2003年委任立法276号17条の監視の仕組みをも機能不全にした。この仕組みは、86条12項において、労使との協議にかけるべきデータや情報の収集のための基本的なものとされていた。

17条は、「全国労働継続取引制度において作成された情報、使用者が管轄機関に提出すべき登録情報、および、これらが利用者に対して実施する活動が労働者の職歴用紙にどのように記載されるかに関する登録情報は、本委任立法で遂行される事業に関して、労働社会政策省、州および県がそれぞれの管轄領域について行う監視活動のために統一共有統計とする。」と定めている。しかし、全国労働継続取引制度の法的根拠および基礎を問題視して、同制度およびその監視の権限は州がもつと主張した州があったため、この仕組みも機能しなかった。

2003年委任立法276号全体の「技術的な」部分について合意が得られ、憲法裁判所に対する訴えのために実施されることのなかった紳士協定は、3大労組の統一同盟において「政治的な」討議が拒否されたことで、全国労働継続取引制度の設立手続が遅れ、17条に定められた「本委任立法の実施から6カ月以内に、本法の様々な措置に関する財政上、物理上および手続上の一連の監視指標を定める」責務を負う委員会の成立も必然的に阻害された。17条にいう情報の収集が行われなかったことで、86条13項の手続が不可能になったのである。

州やいくつかの労使の組織的妨害は、このように、試験的措置の結果が出るのを待つことなくビアジ改革に介入する都合の良い口実を政府に与えることとなった。試験的措置は、労働市場改革の具体的な影響に関する批判を緩和するのに非常に良い機会であったはずなのに、着手さえされなかったのである。

こうした苦境を乗り越えるために、政府は、憲法裁判所2005年判決50号から妥当な結論を引き出し、当初微細な(2004年委任立法251号)、そして後により根本的な修正措置(2005年法律35号、後に2005年3月14日法律80号に転換)を定めることで、失った時間を取り戻そうとした。

これらの措置により、労使から提出されたいくつかの要請を受け入れ、政府は、不利な立場に置かれた人々を組込むための官民連携の規制(13条)を直ちに実行に移し、付属的偶発的労働および派遣労働に関する試験的措置の開始手続をより流動的なものにしただけでなく、労働福祉(workfare)的な観点を取り入れて、元の法律案848号から取り除かれたことにより停滞していた社会保障制度などの社会的緩衝措置制度に関する改革の重要点を一部繰り上げて実施した。

連携的継続的協働労働契約の臨時的規制も、2005年10月24日になって実施の取り止めが決められたことからすると、ビアジ法の試験的措置の道のりは、いまだ始まったばかりといえる。ビアジ法で定められた制度の中には完全に軌道に乗ったものもあるが(とくに、労働者供給制度や外注化制度)、地域で就業サービス網を構築するのに必要な州の認可制度や、新見習労働契約、付属的偶発労働のようなその他の改革の中心的な制度についてはそうはいえない。あらゆる評価が部分的で、イデオロギー的な先入観により損なわれただけでなく、適切な監督が欠けたために、客観的な指標に沿った労働市場へのビアジ法の影響を提示することもできなかったのである。

4.「ビアジ法」の廃止?

一部の学説や社会勢力が提案しているように、ビアジ法およびその実施令を廃止することは本当に可能なのか。ここ数年、複雑で骨の折れる実施過程に携わってきた者なら、「ビアジ法」は、憲法裁判所2005年判決50号および2005年判決384号ならびに「トレウ法」との明らかな連続性もあって、イタリアの法制度に根付いたと断言でき、現在とは異なる連立政府が成立したとしても、これを廃止することは難しいだろう。

この流れを変えるには、立法者の鶴の一声で十分というわけには行かないだろう。逆説的なことに、中道右派の立場の州がビアジ法の実施に対して無気力な中、中道左派の立場の州が遅滞なくこれを実施したことからも、これは明らかである。

言い換えると、ビアジ法を取り止めることは、就労サービス規制から見習労働まで(注16)、イタリアの労働市場のあらゆる中心問題を扱う、多様な州法を廃止する意味をもつことになる。このようにビアジ法を後退させることになれば、いかに注意を払ったとしても大きな社会的混乱を免れない。もともと反対の立場であった者が、責任ある政府機関の要職につくとすぐに、ビアジ法に関する基本的な評価を変えることもありうる。ビアジ法や労働市場に関する白書が提出された初期の段階には批判者が、現在ボローニャで行っていることを見ればこのことがわかる。いまだに、科学的な議論においてこれを指摘した者はいないが、CGIL(イタリア労働総同盟)元総裁で現ボローニャ市長であるセルジオ・コフェッラーティは、ビアジ法にいういわゆる「プロジェクト的な」方法をボローニャ市で実施される連携的継続的協働労働に課す際に、適用範囲を拡大することでビアジ法の実効性を推し進めるという主張をするまでになっている。ビアジ法には、やり遂げる価値のある長所があるという確信である。ビアジ法は、正真正銘の労働憲章を編纂しようという目的の前提たることを狙いとした試験的な法律ではあるが、そのイタリアの労働市場に対する影響を評価する前に、不当にも同法を不安定性の象徴にしてしまった人々にとっても、あらゆる修正が逆の意味を持ちうるのかもしれない。

出所

  • 当機構委託調査員レポート

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