正規雇用を雇用の標準形態とする法案

カテゴリー:非正規雇用労使関係

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  • 国別労働トピック:2006年3月

最近「正規雇用検討委員会」は、正規雇用を雇用の標準形態とし、パートタイム雇用に就く労働者に対しては、正規雇用を要求する権利が与えられるべきであるとする提案を行った。提案には生産性を阻害しないための数多くの例外が盛り込まれている。

提案は、従業員10人以下の企業を法律の適用除外としている。正規雇用を要求する権利を得るために、従業員は該当する仕事に過去5年間のうち少なくとも3年間雇用されていなければならない。しかし使用者は、労働力の7分の1に関しては、パートタイムの労働契約を締結することができる。

使用者が正規雇用の必要がないことを証明できる場合には、パートタイムの雇用が承認される。また従業員が正規雇用を望まない場合には、パートタイム雇用が認められる。

労働組合は、パートタイムの雇用契約について、情報提供を受ける。紛争が起こった場合、使用者には自らの主張を立証する責任があり、事件は労働裁判所で審理される。特定の職業に関する労働協約が存在する場合、法律の適用除外が認められる。

自由市場主義のスヴェンスカ・ダグブラーデット紙は、「政府はまたもやスウェーデン労働総同盟(LO)の要求に従っている」と報じた。LOおよび雇用大臣は、小規模企業に対する適用除外を設けるつもりはないと述べた。LOはまた、より過激な案を主張しており、法案は委員会の提案よりもさらに激しい内容になるものと見られる。

ホワイトカラー労組のスウェーデン俸給従業員中央労働組合連合(TCO)は推移を見守っており(最大労組の事務・専門職労働者組合(SIF)は提案に反対しているが)、専門職労働組合連合(SACO)もほぼ同様である。SIFとSACOはかわりに労働協約の締結を要求している。使用者は、この案が持ち上がった当初からずっと、公的および私的に強く反対してきた。

こうした問題は従来、LOとSNの交渉によって解決されてきた。しかし、総選挙前の加熱した雰囲気の中で、スウェーデン労働総同盟(LO)およびスウェーデン企業連盟(SN)はともに、非常に政治的となっている。LOが法制化を強く要求する一方、SNは1970年代の労働法制改革以前の状況に戻す大幅な規制緩和を主張している。

政府は、春に法案を提出し、2006年9月の総選挙以前に成立させたいとしている。もし与党が総選挙で敗れた場合には、法案はおそらく廃案となり、与党が勝利した場合には、労働組合の2007年賃金交渉の追い風となる。専門家は、使用者が人々を雇用することに益々慎重となる危険性を指摘している。

出所

  • 当機構委託調査員レポート

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