大企業で初めてマレーシア航空が内部告発者保護制度を導入

カテゴリー:労働条件・就業環境

マレーシアの記事一覧

  • 国別労働トピック:2006年3月

赤字経営に陥っているマレーシア航空では、経営刷新策の一環として、(1)20%の予算削減、(2)不採算路線の廃止、(3)第一線で働く従業員を除く新規採用の凍結――と並んで、汚職に対し断固たる処置を取るため、国内の大企業で初めて「内部告発者保護制度」の導入を発表した。

昨年12月に就任して以来、同社の経営建て直しに取り組んでいるイドリス・ジャラ社長は、新制度を社員に周知するため、パンフレットを作成した。それによると、(1)不正行為、(2)汚職、(3)安全危機管理を無視あるいは危険にさらす、(4)職権乱用等ーーを知った社員は、独立の内部告発委員会に通報しなければならないと定めた。社員はその告発内容を立証する必要はなく、取締役会や経営側に情報提供するだけでよい。

一般的に社員は告発を躊躇することが多いとされる。通報者が特定されて経営側から不利益な取り扱いを受けたり、同僚から仲間外れにされることを恐れてのことである。そこで、社長はこの制度によって社員を保護するとの方針を明らかにした。社長は、「誠意を持って告発した者に対し、いかなる形であっても報復や脅迫をすることは重大な違反であり、懲戒処分の対象となる。」と明言した。ただし、告発が事実に基づくものでないか、または悪意に基づいて行われたものである場合、告発者は警告を受けるとしている。

ニューストレイツタイム紙は社説で、内部告発者が制度によって完全に守られたと結論付けるのは時期尚早だと指摘している。制度が存在したとしても、上司が部下にいやがらせをする可能性があり、やはり社員が経営者や組織に対して告発の声をあげるには大変な勇気と確固たる信念が必要だからである。続けて社説は、制度が有効活用されるのか、今後の動きが注目されるが、今回の制度導入が、情報開示・風通しの良い職場環境の実現に向けての重要な一歩であることは確かだと述べている。

フォン人的資源大臣は会見で、マレーシア航空の内部告発者制度導入について、同社の透明性を確保する姿勢と、企業統治における誠実さを表すものとして歓迎した。ただし他の企業への波及については、企業ごとに問題も異なり、制度を推進する適切なリーダーが存在するかどうかにもよるので、他の企業にまで同制度の導入を求めるものではないと述べた。

マレーシアでは過去数年来、NGOが政府に対し「内部告発者保護法」を導入するよう要請していた。目的は、公務員の不正や職権の乱用を明らかにすることであるが、政府はまだ検討を開始していない。社説は内部告発者保護に関し、法制面の強化を進める必要性を強調している。

関連情報