EU拡大に伴う労働者の自由移動の影響は肯定的

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2006年3月

欧州委員会は2月8日、中東欧のEU新規加盟国(EU10)からEU旧加盟国(EU15)への労働者の移動は、概ね積極的な影響を与えており、ほとんどの加盟国において予測よりも労働移動が少なかったことを示す報告書を発表した。報告書は、EU 10の労働者が労働力不足を緩和し、欧州の良好な経済実績に貢献していると分析する。

EU加盟条約(2003年4月16日署名)は、EU10から旧加盟国への労働者の自由移動に関し、EU15が最大7年間の制限措置を採用することができると規定する。2004年5月以降もEU10に対する制限措置を採用しなかったイギリス、アイルランド、スウェーデンは、高い経済成長、失業率の低下、就業率の上昇を経験した。新規加盟国の労働者に対し、引き続き労働許可の取得などの制限措置を課しているEU旧加盟12カ国は、当該措置が労働市場の円滑な統合に寄与していると分析する。しかし、これらの諸国のいくつかは、闇労働や偽装自営業の増加などの事態に直面しているという。EU全体の労働者の流入は限定的であった。

報告書の統計は、ほとんどの加盟国において中東欧諸国からの労働力の流入が予想よりも少なかったことを示している。EU拡大に伴い、過去2年と比較して、EU10の労働者数や福祉支出が急増した証拠は見当たらない。EU10の国民数は、オーストリア(2005年、1.4%)およびアイルランド(2005年、3.8%)を除くすべての旧加盟国において、勤労世代の人口の1%以下となっている。報告書は、EU10の労働者は受入れ国より未熟練労働者の比率が低く、技術不足を緩和し、非常に良好な経済成長に貢献していると指摘する。

報告書は、経過措置は労働移動の管理に関して、わずかな影響しか与えないと示唆する。EU10からの労働力の流入規模は、受入れ国の経過措置には直接関係なく、需給条件に関わる要因によって引き起こされると指摘する。発給された労働許可の多くは、短期または季節的な労働に対するものであった。

EU加盟条約に基づき、旧加盟国は2006年4月30日までに、新規加盟国の労働者の自由移動に関する制限措置を第2段階(2006年5月~2009年4月)も継続するかどうかを決定する。報告書は、旧加盟国が次期制限措置を決定する際の基礎資料を提供することを目的としている。

欧州委員会のヴラジミール・シュピドラ雇用・社会問題・機会均等委員は、「労働者の自由移動は、EUの4つの基本的権利の1つである。労働者の自由移動は、EU15の労働市場に破滅的な影響を与えてはおらず、その反対に、加盟国および欧州全体はその恩恵を被っている」と指摘し、加盟国に対し、経過措置の継続が必要かどうかを注意深く検討するよう勧告した。報告書は、今後、欧州理事会に提出される予定となっている。

EU市民に対する滞在・労働許可:絶対数および受け入れ国の勤労年齢人口(15~64歳)に占める割合

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