欧州議会、サービス指令案を可決

カテゴリー:外国人労働者労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2006年3月

欧州連合(EU)欧州議会は2月16日、「域内市場におけるサービスに関する指令案」(サービス指令案)の第1読会において、修正案を賛成391、反対213、棄権34で採択した。可決された指令案は、欧州委員会の当初案を大幅に修正し、母国法主義(サービス提供者の母国の法令等で許可されている場合には、他の加盟国の許可を得ることなく、その国でサービスを提供できるとする原則)に関する条項を削除し、当初案よりも少ないサービス分野を適用対象とした。また、サービス従事者の雇用・労働条件に関しては、送り出し国でなく、受入れ国の条件が適用される。

サービス指令案は、EUを世界一競争力のある地域とするため、サービス提供の自由に関する法的・行政的障害を除去し、EU域内市場のサービス自由化を達成することを目的としている。欧州委員会は、本指令案を2004年1月に発表した。指令案で最も争点となったのが、母国法主義(country of origin principle)に関する条項である。これに対しては、サービス提供者の母国法に従っていれば、受入れ国の労働基準を下回るサービス従事者の低賃金や劣悪な労働条件が認められ、ソーシャル・ダンピングの容認に繋がるとの批判がなされた。

欧州議会は、この「母国法主義」条項を、「サービス提供の自由」条項に差し替え、加盟国に、サービス提供者の権利を尊重し、「領域内におけるサービス活動に関する自由アクセスと自由行使」を保証するよう義務づけた。指令案は、サービスの自由移動に関する数多くの障壁を禁止している。例えば、サービス提供者が一時的に事業を行っている受入れ国において、事務所を開設するよう要求することはもはやできなくなる。

他方、指令案は、加盟国が、公序良俗、公衆安全、環境保護および公衆衛生の必要性に基づき、国内法でこの自由を制限できる例外規定を盛り込んだ。

加盟国はまた、団体交渉による合意を含む、雇用条件に関する自国独自の規則を引き続き適用することができる。

指令案の適用対象は、郵便・水道・電気・ゴミ処理などの公共の経済利益に関るサービスや経営コンサルタント、検定・試験、施設管理、広告、募集採用、商業代理店などの企業向けサービスである。また、不動産、建築・建設、流通、貿易展示、レンタカー、旅行代理店などの企業と消費者の双方に提供されるサービスやレジャー、スポーツ・センター、遊園地などの消費者向けサービスなども含まれる。

非適用対象は、特別の法令が適用される産業(金融、電気通信・ネットワーク、輸送)、法律、ヘルスケア、視聴覚、ギャンブル、宝くじ、公権力の行使に関る職業や活動、徴税などである。

指令案は、加盟国に対し、指令施行後5年以内に、サービスに関する規定を国内法に取り入れるよう要請している。

指令案の成立には、欧州連合理事会(閣僚理事会)の承認が必要である。理事会が欧州議会の修正の1つでも拒否し、独自の修正を加えるなら、指令案は再び欧州議会における第2読会で審議される。

参考

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