労働社会保障事業における第11次5カ年計画重点課題

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2006年3月

2005年末に発表された「共産党国民経済と社会発展の第11次5カ年計画提案」を受け、現在、中国の各官庁は施策の重点目標を策定している。

2006年1月19日付け労働社会保障部の発表によると、2005年末の労働市場の動向は、失業者が839万人、都市部登録失業率は4.2%であった。一方、全国都市部の新規就業者は970万人、国有企業リストラ失業者の再就職は510万人が成功している。特筆すべきは、このうち150万人が文革期に教育を受け再就職が困難とされている4050世代の中高年層であった。第10次5カ年計画のもとでの就業問題への取組みは、着実に効果を顕した。

しかし、今後15年間に1億人あまりの農村余剰労働力が発生し、都市労働力への移転を図らなければならないという試算も発表されていることから、依然、就職再就職の問題は、中国の経済成長を左右する重要な課題である。

2006年1月16日、黄菊国務院副総理は、第11次5カ年計画期間中においても、就業と社会保障事業の積極的展開のために、資金を投入できるよう大幅な財政措置とることを発表している。ちなみに第10次5カ年計画においては、就業と社会保障事業のため毎年平均16.5%の予算の増額措置が図られ、2005年は全体予算の11%を就業社会保障事業が占めていた。

労働社会保障部の田成平部長は、2005年12月に開催された「全国労働と社会保障事業会議」の席上で、「第11次5カ年計画」期間中の労働社会保障事業の発展に関する総合的課題と具体的事業の考え方を表明した。

田部長の発表によると、労働社会保障事業は、鄧小平が唱えた、先進的生産力の発展、先進文化の前進、最も広範な人民への利益の代表という「三つの代表」の考え方を基本的ガイドラインとし、次期5カ年計画の中核的な推進目標である「科学の発展」を前提に、次の6つの柱を重点目標に定める。

  1. 就業と再就業の実現のため、さらに国民経済社会の発展を促進する、特に職業機会の創出に力を入れ、仲介サービスのシステムを整備し、職業訓練事業を強化、ベンチャーの育成を奨励していく。
  2. 再就職訓練、創業者訓練、農村労働力の都市労働力への転換訓練に特に力を入れ、労働者の資質向上に資するため、公共訓練実施の重点地域を設置する。
  3. 都市部と農村部の社会保障を確実に実施し、市場の機能と政府の役割を明確に意識しつつ、公平性と効率性に重点をおいた労働社会保障の事業展開を可能とする社会保障体系を整備する。
  4. 新たな展開をみせる経済社会状況を反映して、労働者の権益保護に重点をおく安定した労使関係の構築をめざす。具体的には、ベンチャー企業などの新たな経営形態を前提とした安定した労働関係の構築や公平な賃金分配や労働契約の徹底をめざし、特に、2007年までには賃金についての歴史的問題の解決をめざす。
  5. 労働社会保障法制の法的整備を進め、法体系の整備をはかることで、現在の脆弱な法的執行力を強化する。
  6. 労働社会保障システムの機能を向上させる。具体的には、情報化や規範化の水準を向上させ、システム管理サービスを向上させていく。

王東進労働社会保障部副部長他「全国労働社会保障事業会議」に出席した幹部たちも、これら6分野に関する事業発展方針に基づく「労働社会保障事業第11次5カ年計画」の具体的目標の策定とその取り組みの重要性を確認した。

参考

  • 「労働社会保障報」1月16日付
  • 「人民日報」1月19日付

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