海外で就労するフィリピン人メイドの最低月給を400米ドルに引き上げ

カテゴリー:外国人労働者労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2006年12月

海外でメイドとして働くフィリピン人の最低月給を400米ドルとする労働雇用省の新規則が2006年12月15日に施行される。ブリオン雇用相は、同年7月、海外で就労するフィリピン人メイドの待遇改善策として、技能向上を目的とした教育訓練の実施だけでなく、現在全ての国で月200米ドルとされている最低賃金について、香港の市場価値にあわせた引き上げを要求する意向を示していた。

同相は、1970年代に設定された200米ドルとう最低賃金は、現在の状況に全くそぐわず、海外での生活水準やフィリピン人メイドの仕事と責任に見合った給与を設定する必要があると主張。これに対し、人材派遣会社の業界団体などが「賃金は需要と供給のバランスにより決定されるもので、フィリピン政府が一方的に決定するというのはあまりに非現実的」と強く反発している。

こうした反発を受けながらも、同相が今回の引き上げを決定した背景には、海外雇用庁が示しているこの「月200米ドル」という規定すら守られていない現実がある。フィリピン政府によれば、今日、海外で働くフィリピン人メイドのおよそ9割が月給100~150米ドルで働いている。特に中東での賃金が低く、規定以上の給与を得られるのは、香港やカナダ、アメリカ、そしてヨーロッパの国だけとされる。

香港におけるメイドの月給はおよそ425米ドル(約3400香港ドル、24000ペソ)で、雇用主は各種税金等も含めておよそ540米ドル(約27000ペソ)をメイドに支払う。香港では、政府が外国人メイドの処遇について厳しく取り締まりを行っており、雇用主が給料を支払わなかったり、給料が不足している場合には、罰金もしくは実刑が課せられる。カナダ、英国、イタリア、フランスそしてスペインでは、フィリピン人メイドの月給は、1000米ドルもしくはそれ以上とされ、こうした高い給与だけでなく就労国の市民となる機会も与えられている。

しかし、中東の多くの国では、フィリピン人メイドの平均月給は100米ドル以下とされ、給料の不払いもしくは支払い不足というケースも多く、さらには雇用主からの虐待を訴えるメイドも少なくない。こうした現実を問題視しているフィリピン政府は、専門スキルだけでなく就労先の言語や文化についても高い知識を備えた「スーパーメイド」を育成し、同時に最低月給を400米ドルに引き上げ、待遇面などの面でメイドの地位を向上させたいとしている。

これに対し海外就労斡旋業者たちは、中東諸国の雇用主がこれまでの2倍の給料をいきなり支払うことは不可能であり、事実上、中東諸国へのメイドの派遣の禁止と同じであるとし、強く反発している。一方、政府は新規則の影響は一時的なものであるとしながらも、新規則に従わず違法行為に走る斡旋御者が増えることが予想されるため、取締りを強化する方針を示している。

海外で就労するフィリピン人労働者(OFW)数が増加する一方で、違法斡旋業者や雇用主間とのトラブルも多く、特にメイドは虐待の対象になりやすく、その対応策が求められていた。しかし、今回の最低月給の引き上げについては、斡旋業者との話し合いも十分でないまま強行に進められており、さらに違法業者を増やす結果を招くことにならないか懸念されるところである。

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