ソフト業界のオフショアリング
―ソフトウェアサービス最大手タタ、日本向け開発センターを設立

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2006年12月

インドのソフトウェアサービス企業Tata Consultancy Services(TCS)社は10月、日本市場向けに特化したITアウトソーシングサービスを提供する「日本オフショア開発センター」(Japan Off-shore Development Centre、J-ODC)を、インドのカルカッタに設立することを発表した。

日中インド三極分業体制へ

インドは欧米企業によるソフトウェア開発委託が進んでおり「世界のソフト開発拠点」になりつつある。他方日本勢はこれまで低コストの中国に開発を委託してきたが、国内の技術者不足が深刻化している。少子化に備えながら中国偏重リスクを軽減するため、日中インドの三極分業を模索する動きが強まっている。

TCS社は、AT&T Wireless、Lucent Technologies、Nortel Networks、HP(Hewlett-Packard)、British Telecom、Ericssonなど著名な企業を中心とする世界55カ国の企業を対象に、コンサルティング、システム統合、オフショア開発センターといった幅広いソフトウェアサービスを提供するインドのIT業界最大手企業。同社のサービスは、世界各国の1,000社以上が利用しているとされる。これまで言語等の壁もあり、あまり導入が進んでこなかった日本市場であるが、最近は東芝、NTTグループ、NEC、シティバンク日本等を始めとする企業の利用事例も増えている。

開発センターは日本市場向けのハブに

同社は、日本国内でソフトウェアサービスを提供するため、2002年に横浜でTCS Japanをすでに設立していた。日本向け開発センターJ-ODCは、これまで中国の上海や杭州、インドのバンガロール、チェンナイ、ハイデラバード、デリー、ムンバイ、プネなどの開発センターで日本企業向けに提供されてきた各種サービスを統括するハブ機能を持つセンターになるという。日本語に堪能な技術開発者を集め、日本市場に対応した本格的開発センターを目指す。

同社のチャンドラセカラン(N. Chandrasekaran)副社長はJ-ODCの設立に関し、「日本語、日本文化、日本企業特有の商慣習など、日本市場でビジネスを展開する際に必要となる要素を考慮し、重要な日本市場への理解を深めるためのセンターの設立が必要だった。同センターの設立により、当社のネットワークデリバリーモデル(Network Delivery Model)を用いて、顧客に対するサービスの質の向上、ハイレベルな提供プロセス、高い顧客満足度といったメリットが生み出されることを期待している」とコメントしている。

インドへのオフショアリングが本格化

大企業を中心にインドでソフトウエアの開発委託(オフショアリング)を本格化する動きが活発化している。富士通は2009年度までに現地で自社向けに2000人の技術者を新たに雇用する予定。日本の金融機関の情報システムに使う業務ソフトなどの開発を任せるという。インドでは現在、現地企業の技術者500人に開発を委託しているが、委託先が他社の開発も請け負い富士通の意向を反映しにくかった。自社雇用に切り替え品質管理や教育を徹底する。また、日立製作所も今年度中に開発者を15%増やす予定という。インドへのオフショアリングの動きは今後ますます活発化しそうだ。

参考

  • TATA Consultancy Services1, working in Japan, Mycomジャーナル、日経NET

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