サービス指令案、欧州議会で可決

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  • 国別労働トピック:2006年12月

域内サービス市場の自由化をうたった「サービス指令案」(通称ボルケシュタイン指令案)が、11月15日、欧州議会の第2読会で可決された。2004年1月に欧州委員会が原案を提出して以来、2年以上にわたって懸案となっていた指令が成立することになる。

サービス指令は、そもそも、2000年3月に採択された「リスボン戦略」を達成するために策定がすすめられていたものである。欧州を世界一競争力のある活発な地域にするためには、サービス提供の自由を妨げている法的・行政的障壁を除去する必要がある。生産活動の約70%を占めるサービス関連業種の活動が規制によって阻害されているという問題意識が背景にある。

当初の指令案では、公益的あるいは非経済的なサービス以外、すべてのサービスを対象とされていた。また、サービス提供者がその本国で必要な要件を満たしていれば、サービス提供先国での要件は問われないという「母国法主義」が明記されていた。しかし、2004年11月から行われた一連の欧州連合理事会等での審議において、広範なサービス活動を対象とする包括的な適用や母国法主義による悪影響を懸念する声が旧加盟国側からあがり、多くの修正が加えられることとなった。

最終的に指令が対象とするのは、経営コンサルタント、不動産業、建設、建築設計、自動車レンタル、旅行業、観光・レジャー産業などである。一方、適用除外されるものとしては、銀行、保険、年金、投資ファンドなど金融関連、電子通信、運輸、労働者派遣業、ヘルスケア・サービス、オーディオ・ビジュアル・サービス、賭博、保育・介護などの社会サービス、警備、公共機関に関連する専門的職業・行政サービスなどが挙げられる。

また、母国法主義の条項については、問題視された労働条件のソーシャルダンピングが生じないよう当初案に規定されていたものの、激しい批判によって削除されることとなった。欧州議会が可決したサービス指令は、加盟国の既存の労働法や社会保障関連法令に何ら影響を及ぼさない。労働条件については、サービス提供先国の規則が適用される。

サービス指令の成立経緯や背景についての詳細は以下を参照。(当機構海外労働情報(2006年3月2006年6月

参考

  1. 欧州委員会ホームページリンク先を新しいウィンドウでひらく
  2. 欧州委員会ホームページリンク先を新しいウィンドウでひらく
  3. 濱口桂一郎(2006)a 「EUサービス指令案と労働問題」『生活経済政策』2006年1月号
  4. 濱口桂一郎(2006)b 「EUサービス指令案における労働関係規定について」『世界の労働』2006年3月
  5. 濱口桂一郎(2006)c「拡大EUの課題-労働法制の諸問題」日本経済研究センター講演(2006年5月26日)

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